[対談#5]複眼思考で自分を客観視しよう(原田匡)

株式会社ケアビジネスパートナーズ代表取締役の原田匡さんをゲストに迎えた対談もいよいよ最終回。「どこかで客観的に自分を見つめる力があれば、大変なことも乗り越えていけるかもしれないなって気がするんですよね」ミドルマネジメントにエールを送る「熱いぜ!ミドルマネジメント」」をお楽しみ下さい!

熱いぜ!ミドルマネジメントとはみどり会の冊子企画として生まれた”ミドルマネジメントへエールを送る”をテーマとした対談企画。対談の様子を全文テキスト起こしで掲載しています。(取材、撮影:平世将夫)
?原田匡さんのプロフィール
株式会社ケアビジネスパートナーズ 代表取締役
京都大学法学部卒業。日本社会事業大学専門職大学院 福祉マネジメント研究科ビジネスマネジメントコース卒業。経営コンサルタントとしての経験、並びに自らの起業経験を融合し、現在は介護市場に特化した経営支援活動を全国で展開している。介護業界に対する深い知見と全国に幅広い事業者ネットワークを持つ。

相手がいま階段のどこにいるのかを見極めれば『次はこうしてあげなきゃ』が見えてくる

前田いま最後におっしゃった「介護保険」とか「介護事業」。みどり会の誌面だけではテーマが多くて、書ききれないかもしれないんですが、『言葉の定義』ってすごい大事だなぁって今日の対談で改めてぼくは感じたんです。

原田
はい。

前田話を聞きながら、今までの経験や目に入ってきたことを思い出して、紐づけてみると、やっぱり正しい言葉の解釈と辞書がない印象なんです。

原田
なるほど。

前田各社それぞれ、自分たちの都合–とまでは言えませんけれども、自分たち目線のことだけど伝えているケースがほとんどなので、そのあたりを一度原田さん交えて整理して頂けたらいいでしょうね。

原田
まさしく、そうですね。

前田あと、原田さんは介護業界への知見はもちろんですが、それ以外の業種・業態でもマネジメントの経験もあって。それころミドルマネジメント職研修や、講演もご経験がお有りですよね。原田流メソッドというか、ミドルマネジメントの皆さんに対して、『メンバーとの相互理解』『QOL』というのを一つキーワードと仮説して、相互理解を深めていく上で大事なこと。あるいは、やらなきゃいけないこと、やるべきこと、このあたりをあと10分、15分くらいでお願いできますか。

原田
ミドルマネジメントの方向けってことですよね。

前田はい、ミドルマネジメントへのメッセージですね。原田さんのご経験の中から。

原田
なるほど。自分の経験の話になってしまのですが、わたしがまさにミドルマネジメント、つまり中間管理職でメンバーマネジメントをやらなければいけない立場になったときがあるんです。

前田はい。

原田
その時に、心構えとして自分のなかで発想が変わったことがひとつあります。当時メンバーで、なかなかわたしが期待しているような仕事をできない方がいたんです。

前田えぇ。

原田
で、こう・・だんだん腹立ってですね(苦笑)。「なんでこんなにできないの!」とかずっと思うようになってしまって。「どうして、こんな簡単なことができないんですかねぇ」ってずっとわたし自身の上司に言っていたことがあったんですね。

前田はい。

原田
その時に、上司が笑いながら、「そんなことだとお前、メンバーを育てられないぞ」って言うんですよ。「いやぁ、仰ることは分かりますけど、じゃあどうやってやるんですか?」って質問したら、「お前のその質問を変えてみろ」と言うんですよね。

前田発想の転換ですか。

原田
そう。「どうして、彼らは出来ないんだ」って考えるのではなく「どうやって俺は出来るようになったんだろう」って言えって言われたんですよ。

宮嶋
うんうん。

原田
はじめはもう、チンプンカンプンで「何言っているんだろう」って。でもよくよくその言葉を噛み締めてみると、すっごい腹に落ちてきて。「お前だって昔できなかったろ」って言われまして。

前田いやぁ、そうですよねぇ。

原田
そうなんですよ(笑)。出来なかったのに、今出来るようになったのはなぜなんだ、と。「階段があっただろ」って言われて「あぁ、そういうことか」とね。

宮嶋
みんな最初からできるわけじゃないですものね。

原田
はい。相手がいまどこにいるか、階段のどこにいるのかを見極めていくことによって、間違うことなく「いま君はここにいるから」ってのを指摘することができる。するとマネジメントとして『次はこうしてあげなきゃな』っていうのが見えてくるよなということだったんです。

前田うまい表現ですねぇ。

原田
「お前は富士山でいうと、7合目くらいまで来たのかもしれない。だけど相手はまだ登山口のところにいるとすれば、7合目から“なんで早くここまで来ないんだ!”ってイラツイて、物事を言っても意味ないんじゃないか」っていうことをすごく言われたんですよね。

宮嶋
なるほどなぁ。

原田
そう言われてたなぁっていうのを、今すごい思い出してたっていうのがあってですね。

前田はい。

ミドルマネジメント層は“価値ある仕事をしている”と、自信と自覚をもってほしい

原田
ミドルマネジメント層の方って、組織階層でいえば真ん中ですごい大変だと思うんですよ。上にも下にも気を使わないといけないですしね。しかもパイプラインとしてちゃんと情報も伝えないといけない。情報を上にもあげないといけない。分析もしなきゃいけない。

宮嶋
そうですよね。

原田
そんな環境のなかで自分のセルフイメージの保ち方っていうのを、関係性によって変えていかないといけないっていうのがとっても難しいと思うんです。多分…経営トップより難しいですよね。経営のトップってある意味自分のキャラクターを明確にすればいいところもありますし(笑)

宮嶋
周囲がキャラを受け入れざるを得ないですしね(笑)

原田
ミドルマネジメントの方々は本当に優秀な方が多いって思うんですけれど。でも自分たちがすごく価値ある仕事をしているというか、そういうことをあまり感じない立場でもあると思うんですよ。

宮嶋
調整が多い、って印象もありますしね。

原田
でも“すごく価値ある仕事をしている”というところについて、自信と自覚をもっともってほしいなぁというのはすごく思うところです。組織の機能という点では確かに、上と下がいて調整が多い云々というのはあるかもしれません。だけど、ものすごいノウハウと情報を貯めている時期でもあるんじゃないかなぁって思っていて。

前田なるほど。

原田
で、そこがきちっと理解できている方は、またさらに上のポジションにあがっていくとかですね。自分を俯瞰する見方を身につけるといいんじゃないですかね。仕事の渦中にいると、視野狭窄に陥ることってどうしてもあるじゃないですか。

宮嶋
ありますねぇ。

原田
色々な意味でプレッシャーを感じているミドルマネジメントの方々が視野狭窄に陥る可能性って高いと思うんです。自分自身に対する引いた目線を持っていると、もっともっと仕事が面白くなったり、新たな価値を見いだせるのになぁとか、傍から見ていて思うときがありますよね。

宮嶋
なるほどなぁ。

原田
うまく言えないですけれども、ミドルマネジメントの方って、そういう大変さ、息苦しさの渦中に常にいるイメージがスゴくありますよね。単純にスゴいなぁって思いますよ。絶対真似できないもん。

宮嶋
(笑)

原田
自信ないですよ(笑)そんな上から下から色々言われるなんて。

宮嶋
(笑)そうですよね。

客観視して自分を見る眼をもつ。セルフイメージを持てるかどうか。

原田
メッセージというか、本当にいますごいことを経験しているんですよって。そんな渦中に自分はいるんだということを理解していただいて、客観視して自分を見る眼をもってですね、そしてセルフイメージを持てるかどうかって大切じゃないかなとすごく思います。それがネタになると思うんですよね。自分自身の人生にとって。

宮嶋
ネタ、糧ってことですか。

原田
今の時代って共感できるかどうかって本当に大事じゃないですか。たぶん、その感覚を持った上で、更に上のレイヤーに移動される方は本当にすごいんじゃないかと思うんです。先ほど話したわたしのかつての上司ってそういう共感力がとても強い方だったと思うんですよね。

宮嶋
そうですね。共感できる話ができるかどうかってのも大事です。

原田
ミドルマネジメントの時にはでコテンパンにやられたらしいですよ。でもその経験があるからこそ、いいい上司になっていた気がするんです。サラリーマン経験も、人生経験も少ないわたしのような人間がポンっと組織に入ったら、とてもじゃないけど、あんなこと言えないですよね。

宮嶋
経験からでてくる言葉ってありますよね。

原田
調整業務含めて、辛いこといっぱいあるかもしれませんが、捉え方ひとつで後々すごいパワーになるかもしれない。少なくともその可能性があるというのは、ミドルマネジメントの方々の面白さというか、凄さじゃないかなぁって風に思っていますけれどもね。

宮嶋
セルフイメージ、共感力っていうと、ぼくがちゃんとしたサラリーマンを経験したのって銀行に勤めていたときだけで、末端行員だったわけです。で、今考えると支店長の下くらいの人たちは数字持たされて、ゴリゴリ叱られている先輩たちがいた。当時ぼくが見ていたら彼らはちょうど今の私くらいですよね。

原田
はい。

宮嶋
支店長がきっと今の私と同じ歳で。恐らく本部からは言われるわけですよね。数字はどうなっているのか、進捗がおかしくないか、とか。かつ下の方からも言われるわけですよね。「支店長のやり方が見えません」とか。

原田
ガンガン言われていますよね、きっと(笑)

宮嶋
ぼくはそうした経験がなかったが故に、オーナー系ベンチャー企業ってミドルマネジメントの気持ちが分からないから、しわ寄せが行くんでしょうね(笑)なんか今自分の話で、社員に悪いことしてるなって(笑)思わず反省しちゃいましたね。

原田
(笑)それはわたしの実感です(笑)

宮嶋
もしかしたら、経営側がちゃんと汲んでいる会社が伸びている会社なんでしょうね。

原田
だと思いますね。そういう共通点ってあると思いますよ。

宮嶋
一つの鍛錬する場としてもミドルマネジメントの位置づけをする。そしてしっかりとそこで酸いも甘いも鍛錬してる、経験させていく。そういう会社が伸びるんでしょうね。

原田
わたしもそう思いますね。やっぱり、すごいことしていると思いますよ。経営トップの人に「やってみて」って言ってもできないと思います。性格的に(笑)

宮嶋
今の話を聞いて「ぼくはできないよなぁ」って(笑)冷静に思いました。上から言われて、下から言われて。嫌だって言われたら、すぐに辞めちゃうなきっと(笑)。自分一人ででやった方が早いとかいってね。

原田
だからミドルマネジメントの方々ってすごいことをしていると思うんですよ。

宮嶋
ある意味四面楚歌で、だけど四方がクライアントであり…ですよね。

前田逆にちょっと見方を変えるとね、そういう人たちが板挟みになって、メンタル不調になってしまうことが、一方では現象としてありますよね。それはどうしてですかね?ちょっと視点を変えて。

組織のなかの自分は機能であり、役割です

原田
いま増えてきていますよね。

前田うん、そう。組織のなかのミドルマネジメント層で、抜けてリーダーシップをとる人がいる一方で、メンタル不全者が増えてきている。その違いを産んでいる要因は何でしょうね。世の中一般的には、“ミドルマネジメントって大変で可哀想だよね”っていう風潮があります。今回このみどり会の誌面でとりあげたのは、会員企業の管理職の人たち、みなさんのQOLが、実は『企業の源泉なんだ』っていうところから、このテーマをとりあげたわけです。

原田
はい。

前田その一方、現実はそうじゃない、QOLを犠牲にしているって現実もあるよねっていう視点もあったわけです。どうしてそういう状態が起きているのかってことを、今日最後の問題提起にしたいなと。

原田
その答えになるかどうか分からないんですが、自分のなかで“パッ”と浮かんでくるのは、良し悪しは別として、“仕事イコール自分”になっちゃっている気がするんですよね。

宮嶋
はい。

原田
組織のなかで仕事を担当している自分って、ある意味機能であり、役割じゃないですか。最近つくづく思うんですけれども、機能、役割を演じてるわけですよ。演じなきゃいけないと思うんです。

前田はい。

原田
だけど、その役割と自分本来の個性ってあまり関係ないんじゃないかと思うんですよね。組織から求められていることと、個性がハマれば最高に仕事は面白くなると思うんです。だけど、あくまでも組織で求められていることを、演じる、実践するということで考えたときに、自分をもう少し、俯瞰をするというかですね、そういう目線がより必要なんじゃないかな、というのが今の話を聞きながら思うところですね。

宮嶋
なるほど。

原田
これっていろんな会社の社長にも言うんですよ。自戒も含めてですが「あなたは社長なんですか。経営者ですか」っていう問いを。

宮嶋
はい。

原田
いま社長って1円の資本金で会社つくってしまえば誰でもできるじゃないですか。だけど本当の経営者って少ないんじゃないですかね。個人事業主と経営者という違いがあるとした場合、経営者としてやっていこうと考えるなら、多分自分は自分でも、組織の論理に合わせないといけないわけです。

前田そういう面もありますね。

原田
ある意味、経営者という仕事を全うしなきゃいけないって思っているからですよね。それと『自分という個性は別』なんですよ。もちろん、一緒になれば最高かもしれないけれども、やっぱり別なんじゃないかなぁ。

宮嶋
なるほど。

原田
でもそれは、経営者だからって話だと思っていたんですが、ミドルマネジメントでも同じことが言えるのかなぁって。今お話をしていて改めて思ったところです。

宮嶋
というと、つまり・・・。

原田
組織における機能として、お金もらって仕事をしているプロフェッショナルとして、きちんと役割を演じなきゃいけないという責務はあると思いますよ。ただし、それはそれとして、どこかで客観的に自分を見つめる力があれば、大変なことも乗り越えていけるかもしれないなって気がするんですよね。

宮嶋
今日の話のなかで、視野狭窄や、客観的なもう一つの視点を持つっていうキーワードが幾度か出てきていると思うんですけれども、それが自分自身に対してもあるということですよね。仕事イコール自分になっちゃっている。すると否定されてしまうと、全人格否定になってしまっているというね。

原田
そうです。そうです。

宮嶋
視野狭窄にならないように、俯瞰的に何事もみるようにする。これはよく言われる話でしょうけれども、個人のQOLを計るうえでも必要だということですよね。

原田
はい、そう思いますね。

宮嶋
なるほどなぁ。複眼を持つことって大切ですよね。今日はありがとうございました!

熱いぜ!ミドルマネジメント-原田匡さんとの対談に対する大條充能氏のコメント
原田さんが指摘する介護保険屋という誤解は、今までの日本を象徴した話だと感じるぜ。健康及び介護保険という枠組みの中でビジネスをとらえていると、もっと大きなチャンスを見失ってしまうぜ。
リクルートを創始者江副さんの創業の理念は「誰もやらないことをやる」だったぜ。誰もやらないビジネスだから、サービス提供者No.1になることができ、創業者利益を獲得できるという戦略だぜ。江副は誰も見向きもしなかった求人広告をビジネス化し、情報流通業を確立したぜ。当時の大手広告代理店各社はそのやり方を隙間産業と見下したが、何が正しかったかは歴史が物語っているぜ。
さて話しを戻すが、介護保険のマーケットにおいて、ユーザーのニーズをしっかりおさえ、保険外サービスで産業化することは「誰もやらないことをやる」江副の理念と全く同じことであると考えるぜ。それは本流でない隙間産業だと思う人もいるかもしれないが、時代を切り開くとはそういうことだぜ。
俺が18年前に創業したゼロインも江副の創業理念を引き継ぎ、誰もやらない「総務」のアウトソーシングを事業化したぜ。18年やり続けたことで業界のオリジナルポジションを獲得できたぜ。このメッセージを読んで、介護業界の中から隙間をねらう新しいビジネスを立ち上げる人が出てくることを期待したいるぜ、熱いぜ!