[対談#3]介護事業者が介護離職という現象に対して向き合う重要性(原田匡)

介護事業者が介護離職という現象に対して向き合う」ことの重要性。介護業界以外でもみられる事業者と利用者の情報ギャップを埋めることの必要性。情報ギャップを埋めていくことは、選択肢の多様化にも繋がる要因のひとつかもしれませんね。株式会社ケアビジネスパートナーズ代表取締役の原田匡さんをゲストに迎えた「熱いぜ!ミドルマネジメント」対談を引き続きお楽しみ下さい。

熱いぜ!ミドルマネジメントとはみどり会の冊子企画として生まれた”ミドルマネジメントへエールを送る”をテーマとした対談企画。対談の様子を全文テキスト起こしで掲載しています。(取材、撮影:平世将夫)
?原田匡さんのプロフィール
株式会社ケアビジネスパートナーズ 代表取締役
京都大学法学部卒業。日本社会事業大学専門職大学院 福祉マネジメント研究科ビジネスマネジメントコース卒業。経営コンサルタントとしての経験、並びに自らの起業経験を融合し、現在は介護市場に特化した経営支援活動を全国で展開している。介護業界に対する深い知見と全国に幅広い事業者ネットワークを持つ。

介護離職問題は、ミスマッチが要因

宮嶋
へぇ。。心情的には理解できなくもないんですけど。

原田
うん、そうですよね。でもホントにその方々は“現実的な話として”と前置きして言ってましたけれど、まず帰ってきたって親には何もできないんだ、と。本当になーんにもできないし、役に立たない。で、親と喧嘩ばっかりしてる人もいる。

宮嶋
うぅ~ん。

原田
結果的に親御さんが亡くなったあとに、地元で仕事探しても、やりたい仕事が見つからない。かといって東京にも帰れないって、ボロボロになってっていく人もいるんだって。だったらそんな情けないことすんな!って話なんですよね。

宮嶋
親の面倒をみる、って前には自分たちの生活の安定って現実がありますしね。

原田
でね、この前も言ってました。「そんな心配事は私たちに言ってくれたら、全部やる!!」って言うんです。「何をやってくれるんですか?」って聞いたら、例えば、月に1回、ちゃんと経過報告の書類を出す、もしくは事業所の中から、時間のある時にSkypeで繋いで、親と話をする機会をつくることもできる。いくらでもそういうことをやることができる、と言うんですよね。

宮嶋
あぁ、なるほど。

原田
結局事業者の方も『何のために私たちがいるんだ』って存在価値のことを考えなきゃいけないんですよね。そういう気概を持っている事業者がいることが、介護離職をしようとされている方々には見えないし、伝わっていないですよね。

宮嶋
はい。

原田
このミスマッチはこれからすごく出て来ると思います。新しいサービス、新しいものを生み出していって、もっと役に立とうと思っている方々がいる限り、もっと事業者側からも伝えていかなきゃいけないというかですね。

宮嶋
僕らからすると知らないことだらけですしね。

原田
そのあたりを、我々としても突いているところなんですけれどもね。介護離職の問題っていうのも、突き詰めていくとミスマッチになっていることが多いんですよね。

宮嶋
ほう。

原田
どうすればいいかわからないじゃないですか、ご利用者の方は。首都圏でお仕事をされている方のなかには、“自分が帰らないといけない”って思っている方もいらっしゃいますけど、精神的な柱にはなるのかもしれませんが、正直そんなに役に立たないんですよね、正直言うと。男性は特に役に立ちません(笑)。

宮嶋
(苦笑)確かに。

選択肢があって検討したうえで判断できるのか、選択肢がないのか。

原田
それこそ我々のところに相談して頂けたら、そのアレンジができるかもしれないです。以前も前田さんがFacebookで言及されていた、ゴールドマンサックスがニチイ学館と提携して、年間100時間分の介護サービス利用料を会社が全額負担する人事制度を導入したじゃないですか。

前田ありましたね。

原田
あれも社員の方はとても助かると思うんです。記事では介護離職の費用云々ということが注目されていましたけれど、一人ひとりが求めるサービスが違うんじゃないかという前提に経つと、選択肢がニチイ学館のみでいいのか?って疑問も今後でてくると思うんですよ。

前田あぁ、それはそうですよね。どこの地域に住んでいらっしゃるのかとかも影響されるでしょうし。

原田
はい。利用されたいのニーズに合わせたものが必要になってくる時期がもう来ると思うんです。そのあたりに着目した事業者が増えることで、介護業界がもっともっと産業化していくことによって、いろんな事が解消されてくる一つの切り口になるんじゃないかな、ってぼくらは思っています。そこを解消しないと色んな意味で日本としては、まずい状況になりかねないですよね。

宮嶋
そうですよね。

原田
企業として考えてみても、お金かけて人材育成した人に、途中で辞められちゃうわけですから。離職されるってのは、あまり触れられていませんがものすごい損失じゃないですか。

前田先日、ある専門商社の方に聞いたんですけれど50代、60代の管理職層が、介護があるので、海外赴任を断る事例がでてきている、散見しているっていうんです。「介護があるので」って言われちゃうと、会社としては「病気でいけない」って断られるよりも、何も言えないっていいますね。

原田
うーん。そうですよね。

前田それって原田さんがおっしゃったように「任せられる」って事業者があれば、選択肢のひとつになるかもしれないですけよね。選択があって検討したうえで行く行けないを判断できるのと、そもそも選択肢がないって状態では全然違うじゃないですか。きっとそこを狙ってるんですよね。

原田
そうです。はい。

前田そういったハブになるビジネス、機会をつくっていくっていうのが原田さんのやりたいことから、すごくいいと思うんですよね。すみません、話の腰折っちゃって。

介護保険制度は“3ヵ月まず休んで、介護のアレンジをして、場を整えて復職しなさい”っていうのが制度主旨

宮嶋
いま話を聞きながらふと思ったんですけれど、結局親が倒れた、介護が必要な状況だから近くに寄り添わなきゃいけないってことは、『まわりの目を気にしている』っていうことが大きいんですかね。

原田
そうかもしれないですね。それはあると思いますね。そういう機運っていうものは確かに存在していると思います。ただ、それに乗ってしまうことが本当にご利用者、ご家族にとってためになるのかなぁ~って考えると、おっしゃる通り周りの目を気にしているだけじゃないですかね。

宮嶋
実際は違うますよね

原田
うん。これは酷な話かもしれませんが“帰ろう”と思う方を取り巻いている環境って、恐らく4、5年もすればご両親が亡くなってしまう可能性が高い状況が多いんです。だから、そのあとのことまで考えられないんでしょうね。

宮嶋
まずは目の前のことに‥ってなりますよね。

原田
そりゃあそうですよねぇ。ですから、先々のことについても、考えてないとは言えないけれども、“今は考えられない”んじゃないですかね。そんな先のことよりも、いま目の前の優先すべきこと、大事なことがあってっていうこともあるのかなぁと思うんですけどね。

宮嶋
雇用保険の介護休業制度も、93日、3ヵ月しか想定してないじゃないですか。

原田
そうですね。

宮嶋
基本的には、べったり介護しなさいよっていうよりも、“3ヵ月まず休んで、自分で介護のアレンジをして、場を整えて復職しなさい”っていうのが制度主旨ですよね。

原田
そうです。

宮嶋
恐らく国もそういう制度主旨で、インフラづくり、今はちょっと先々の方向が見えてきたんですけれども、これからのインフラはそういう風につくりますよ、っていうとこなんでしょうね。

原田
意図としてはそうでしょうね。

宮嶋
インフラとしてのミニマムづくりは国がやるけれども、その上の“付加価値の高いサービスはあなたたちが選んで、コーディネートしていきなさい“ってことですよね。託せる相手を探してきなさい、っていわれても93日しかない、「93日じゃなにもできないじゃないか」っていうのもあるかもしれないけれど、その期間とうのは実は事業者の選定とか、施設選定をしなさいっていう意味、ただそれだけの期間なのですよね。

原田
おっしゃる通りですね。

前田意図というのは、世の中にアウトプットされているんですか?

原田
ほとんどの方々がその意図、期間をどう利用するかということについての認識をされていない気がしていますね。

前田そこをきちんと伝えていくのは原田さんたちのミッションですよね。

原田
ホントですね。ホント、今のお話を聞いて、そうだなぁって改めて思います。まさに介護休業制度の3ヵ月間っていうのは、『アレンジをして、帰ってきなさい』っていう話にも関わらず、現実はそうなってないんですよね。

宮嶋
そのまんまずーっといっちゃってって。

原田
そうですよね。だからもっと事業者の方々が介護離職っていう現象に対して向き合って、遠くで働いている息子さん、娘さんに『私たちに任せてください』ということを、具体的なサービス含めてもっともっと伝えていくだけでも、住みやすくなるでしょう。

宮嶋
伝えてなければ、知られないですしね。

自分たちの当たり前が、専門外の人にとっては当たり前じゃない

原田
ご利用者・ご家族と事業者の間にものすごい情報ギャップがあると思うんです。

宮嶋
といいますと。

原田
情報のギャップをですね、ご利用者・ご家族側からもっと情報を探して埋めていこうっていっても、無理があると思うんですよ。

宮嶋
そもそもどこに行くかというと、自治体とかケアマネージャーの方だけになりますしね。

原田
はい、となると事業者側が持っている情報、自分たちにとっては当たり前だとに思っていることをもっと出していかないといけないんです。自分たちにとって当たり前なことって、専門外の人からすれば全然当たり前じゃないってことがいっぱいあるわけですよね。

宮嶋
他の業界でもよくある話しですよね。

原田
そのあたりは、これから介護業界の産業化を推進していくにあたってひとつのキーになってくるところなのかなぁと思っています。

残りの人生をどう楽しむか。どういうQOLを支えていけるか、が介護

宮嶋
いや?面白いですよ。実は介護業界ってこのままの体質だと先がないんじゃないかっていう話を、某介護事業者の役員の方とお話したときに出てきたんです。

原田
そうなんですか。

宮嶋
その人が言う介護事業は「介護保険を使った介護事業」かもしれないですけれども、もう医療保険にのまれるだけで、そこはもうないだろう、って言っていまして。

原田
なるほど。

宮嶋
地域活性化、街起こしみたいな絆を深めるようなプロジェクトをやろうって考えているらしくって。『介護保険収入に頼らないものをやっていこうっていう動きがあるんだな』ってその時は聞いていたんですけれど。今日原田さんの話を伺いながら、やっとこう‥その時聞いていた話と結びついたんです。

原田
介護保険っていう世界で括ると、おそらく医療が飲み込んでいく世界になると思うんですね。その一方でわたしが医療と介護って似て非なるものだとも思っているんですね。

宮嶋
はい。

原田
医療っていうのは、–これは私の解釈で、兄が医者なので、よく話をするんですが、医療っていうのは問題発見と問題解決だと思っているんです。要するに身体をみて、どこが悪いか発見をして、それに対して治療というものを施して、それで元気になったよかったね、というのが一つの流れです。

宮嶋
うんうん。

原田
もしくは「これ以上治りません」っていう状態でストップする。表現が悪いですけれども、そこでは身体は物質扱いですよね。ある意味では物質として扱わなくてはいけない部分もあると思うんです。

宮嶋
あぁ、なるほど。

原田
一方で心のケアがあると思うんです。介護っていうのは「もう治ったよ」とか、もしくは「もうこれ以上治らない。足を引きずりながらしか生きていけないよ」って様々な事実と向き合って、残りの人生をどう楽しむか、どういうQOLを支えていけるか、というところが介護じゃないですか。そうすると、アプローチが全く違うわけなんです。

宮嶋
うん。そうですね。

原田
そういう俯瞰した見方をすると、介護が医療にどこまで飲み込まれるかって話になった時に、医療にそこまで求めることができるのかといことになったりですね。最初の方の話じゃないですけれど、医療従事者の方々は医療に誇りを持っていますから、どこまで介護にパラダイムシフトを起こしながら入り込んでいくことができるか、と問われると正直まだまだだと思います。

宮嶋
医療と介護、それぞれ役割も全然違いますものね。

原田
そうです。それに医療従事者の方々は、できれば医療で生きていきたいと思っていると思うんです。介護には携わりたくないというのが現時点での本音じゃないでしょうか。ただ止むに止まれぬ状況、これからの時代の考え方で介護もやらなきゃいけないってことで入ってきていますけれど、未だに医療分野から介護にも携わっている方は本当にわずかです。

宮嶋
働く人の意識までは一気に変化しませんからねぇ。

原田
これからは診療報酬もどんどんカットされていく。医療と介護の境目もボーダーレスになっていく。だから介護も取り込んでいかないと、医療としてはやっていけないって危機感もあるのでしょう。先ほどの方がおっしゃったような観点というのは正しいと思います。

宮嶋
なるほどなぁ。

(次回:介護業界にもマーケティング的発想が必要に続く)