[対談]個性の違いが判断にあたえる影響―[古野俊幸♯5]

熱いぜ!ミドルマネジメント対談企画。第2回目のゲストに人事界隈ではご存じの方も多いFFS理論をベースとした最適組織編成(チームビルディング)を提供する株式会社ヒューマンロジック研究所の代表取締役 古野俊幸氏をお迎えいたしました。「組織の要であるマネージャーが弱体化している」多くの企業の人材開発を支援してきた古野氏との対談はいよいよ最終回の第5回目。おたのしみください。

熱いぜ!ミドルマネジメントとはみどり会の冊子企画として生まれた”ミドルマネジメントへエールを送る”をテーマとして毎月開催される対談企画。対談の様子を全文テキスト起こしで掲載しています。(取材、撮影:平世将夫)
古野俊幸さんのプロフィール
株式会社ヒューマンロジック研究所代表取締役
関西大学経済学部卒。新聞社、出版・教育会社を経て、FFS理論を活用した最適組織支援のコンサルティング会社・CDIヒューマンロジックを1994年に設立。組織・人材活性コンサルティング業務に従事。現在に至る。これまで500社以上の組織・人材の活性化支援を実施してきた日本国内におけるチームビルディングの第一人者。組織人事監査協会理事、人材育成学会会員、NPOプロカウンセリング協会理事、筑波大学アメリカンフットボール部組織・メンタルコーチも務める。
主な著作:「組織潜在力」(プレジデント社)、「入門チーム・ビルディング」(PHPビジネス新書)、「適正配置と組織の最適編成マニュアル」(アーバンプロデュース刊)、「入門チームマネジメント」(PHP研究所)、「セルフコーチング」(PHP研究所)、「組織を変える!社員を変える!組織が変わる!」(中経出版)(ともに共著)など

組織の要のマネージャーが弱体化している

古野
マネジメント層になるってことは自分ゴトの幅が拡がるってことです。だから別に拒否権あってもいいんですよ。そんな厳しい世界いきたくないと。ま、現実的には拒否することは難しいと思いますが(笑)でもそんな世界があるということを人事部は何も言わない。まわりも「昇格おめでとう」とか「よかったね、これで給料あがるね」って(笑)

宮嶋
(苦笑)

古野
ちょっと待って”給料あがるってことはその分責任も重くなるってことですからね”ってことを忘れてやいないかいと。自分ゴトにするための、修羅場に対する経験があまりにもなさすぎるんで。極端に言うとイニシエーションですよね。イニシエーションさせるべきです。

宮嶋
応援というか、もう叱咤激励ですね(笑)「いまの、そんな状態でいいのか」って話ですね。

古野
本当にそう思っていますもの。ぼく自身が危機感があるのは今の会社もなんでやろうかって思い立ったのかというきっかけというか想いに繋がるんです。そもそも「日本の組織おかしいぞ」と感じたところから会社をつくろうとしたんですよ。日本というの国土は人という資産しかない国なんです。そのわりには人を活かせていない。本来日本は組織に強い風土をもっているんですよ。アメリカとはそこが違う。

アメリカは多民族国家として建国されてきた経緯もあって、本来は個人主義的国だし、リーダーシップの国なんです。“優秀なリーダーがいればいい”って彼らは言い切っているんですよね。リーダー以外は極端に言うと全部駒です。リーダーが使える駒であればいい。ま、駒としてのプロフェッショナルさは要求されますけどね、そこでの格差はとてもある。対して日本という国はチームだとか組織として勝ってきたので、組織の要になるのはマネージャーなんです。そのマネージャーが弱体化していることにすごい危機感を持っていますね。

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宮嶋
軍隊にたとえると組織編成がわかりやすいのですが、マネージャーといえば将校の下のほうですよね。いわゆる青年将校。

古野
そこが元気じゃないと勝てないですよ。

宮嶋
少尉、大尉とか・・・。

古野
ま、実務としては少尉くらい。まさに八甲田山(注:八甲田雪中行軍遭難事件のこと)ですよね、意思決定が。大尉とか大佐っていわゆる名誉職なんですよ。別に現場指揮はしないんですよ。少尉が連隊を率いているわけで、彼らの意思決定がまずければ隊は全滅してしまうんです。

宮嶋
八甲田山のお話がでたので。たしか同じ山を同じ日に2チームで登っているらしいですよね。

古野
そうです。

宮嶋
片方が全滅して、片方が生き残っていると。

個性による思考プロセスの違いが、結果につながる

古野
実は小林惠智(FFS理論提唱者)が解説しています。その時の分析っていうのはシミュレーションです。FFS理論を用いて「おそらくこの人はこの個性だろう」という推察を行いまして、我々なりのロジックとして分析結果を社内にもっているんです。全滅した部隊を率いていた少尉が、お飾りで来た大尉や本来は指揮権をもっていない人のアドバイスに対して従ってしまうわけです。
 
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宮嶋
へぇ。

古野
「軍隊たるものが地元の農民の話を真に受けて何をするんだ!」とか言うわけです。そもそも出発の段階で地元村民が「吹雪のなか行かないほうがいいよ」と行軍の中止を進言してきています。どうしても行くなら案内役もする、と言っているんですが、これを断ってしまうんですよね。

宮嶋
なるほど。

古野
そういう地元の人の知恵を授かっているのに、上官、この人は本来指揮権ないんですがその人の言うことを聞いて「そうですよね」と言ってしまう。「軍隊が引き返すとは何事だ!」とか言ってしまって結果的に全滅してしまうのです。

宮嶋
ちなみにその少尉の個性をFFS理論の因子でいえばどうなりますか。

古野
行動とか言動を紐解いていくとBCDという因子の順番ですね。

宮嶋
というとまず最初に受容しちゃって、次に聞くわけですね。そして弁別性の判断によって、もうこれは従わないって。。

古野
B因子が最初にきていますので柔軟ですから、地元の人の話にも耳を傾けるわけです。話を聞いて合理的にいまこうだよねと判断するわけですね。次に強い因子としてCの弁別性があります。弁別性って情報によって判断するでしょ。

宮嶋
えぇ、そうですね。

古野
つまりこういうふうに思考プロセスを追ってみることができます。「自分は土地勘がない」という状態において、地元の人の情報の方が正しいという判断ができているわけです。そして次に強い因子はDの拡散性ですよね。そこで反抗的、つまり絶対生きようと。大隊とは落ち合うことになっているわけです。

でもここで「こんな天候のなかでそんなことはしなくてもいいだろう」という拡散性の天の邪鬼的要素、ディストレス的な特性が働いたのかどうか、とにかくそういう事で感情が動くわけです。今の状況であればここでまずは撤収する、もしくは様子をみるという方が合理的だと考える。で結果として留まるわけですよね。

宮嶋
反対に全滅したほうの個性というのは。

古野
受容型・保全型ですね。受け入れて守る。つまり上の言うことをしっかり聞くわけです。

宮嶋
ぼくの個性だったら、きっと撤収するんでしょうねぇ。

古野
即撤収でしょ(笑)

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宮嶋
ここで死ぬの嫌だよね。もう引こうぜ、みたいな感じだろうなぁ(笑)叱られてもいいんだよ、そんなの。命あっての物種だぜみたいに(笑)

古野
そうそうそう。始末書書けば済むよ、と(笑)言っているかもしれないですよ。八甲田山の遭難事件はのちに小説になって(注:新田次郎の『八甲田山死の彷徨』)、映画化されましたね。たしか北大路欣也さんが演じていましたかね、助かった方を。高倉健さんがそっちの方についてたんじゃなかったかな。
 
当時でいうと日本の映画界にいるほとんどの人が出演したんじゃないのかな、三國連太郎や加賀まりこ、秋吉久美子とか緒形拳とかもでていたよね。たしか映画化の話は最初に東映に持ち込まれたけど東映が断って。そのあと東宝で製作して大ヒットしたんですよね。

宮嶋
あれを活かして、確か日露戦争の戦略組んだんですよね。

古野
そう。本来は厳寒地での戦いを想定した訓練でしたから。2年後に日露戦争が起きるんです。八甲田山の遭難事件は、参加者210名中199名が死亡という近代登山史での世界最大級の山岳遭難事故でなんですよね。ちょっとありえない数字ですよ。3桁人数ですからね。それを新田次郎さん原作の『八甲田山死の彷徨』をFFS理論的に処理して。管理職、ミドルマネジメントの重要性を説きつつも、バカな官僚的判断というのを指摘するという記事を書いています。

宮嶋
面白いですね、ちょっと読んでみたいですね。

古野
あれは意思決定論のケースにしてもいいんじゃないかと思います。だからいつもうちは雪山ゲームというのをいつもやるんです。さきほども話したあの研修、思考プロセスの研修には裏にそういう意図があるんです。本当に死にますよ、そういう意思決定では。いいんですか、と話をしていくわけです。

有事になった時に使えるスキルを身につける

宮嶋
元々このFFS理論は米国海兵隊のために開発されてきたということですが、アメリカ軍ってそういう研究(教育的投資を抑えつつ生産性を最大化する試み)をされているという話を聞いたことがあって。組織としての本質をかなり突いてるなぁというのが、最初にFFS理論をきいた私の印象でして。

古野
有事対策ですよね。特にアメリカでは有事になればなるほどスキルは吹っ飛ぶと習ってきたんです。彼らがやる訓練っていうのは、「有事になった時に使えるスキルを身につける」ことなのですよ。
 
例えば狙撃。100発100中の精度を誇る狙撃手がいるとします。でも現実には足元に実弾を撃ったときの狙撃率がぶれない人を起用します。足に当たれば行動を止めることができますから。平時で狙撃率が高い、的に当たる人なんて不要なんですよ。

ちょっと余談ですが、海兵隊では訓練であっても事故を起こすようにプログラムがつくられているらしいですね。実戦で死ぬよりも訓練で骨折したほうがいいだろって発想ですよね。場合によっては片足がなくなるような事故も何回かにに1回くらいは遭遇するかもしれないけれど、死ぬよりはいいだろと考えている。
 
宮嶋
訓練の時点で、相当な負荷をかけているわけですね。

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古野
しかも訓練とは言わない。だから当人たちにとっては訓練じゃないんですって。本当に事故が起こる、本当に実弾で撃たれるんだそうです。ぼくの知り合いで実際に訓練中に足撃たれて貫通して、傷がいまだに残っているとかいますよ。よかったよね、死ななくて、という話になっちゃうんですけど。

宮嶋
訓練で極限状態をつくってしまうんですね。

古野
睡眠時間中に、サイレンがなって、(バーチャルだけれど)テロが発生したってことで実際に現場に行かせるようです。で途中で解除される。そういうことがいつあるか分からない状態を日常的につくっていくそうですと。世界的に一番有事に備えている組織はどこだ?って考えている、消防署らしいです。警察よりも消防のほうが有事に備えている。

なにしろ誤報であろうとなんだろうと出動しますよね、救急車って。一番米軍海兵隊に近い日本の組織はと聞かれると、あえていうと消防署だと答えています。ま、彼らはすごいストレス状態に置かれていますよね。はなしを聞くと警察署よりもストレス状態にさらされているようです。警察には交番があって、どちらかといえば指示がでてから現場が動きはじめるんですよね。救急車は電話一本で動きますから。

宮嶋
確かに警察は捜査本部ができたりとか、官僚的ですよね。
 

熱いぜ!ミドルマネジメント-対談に対する大條充能氏のコメント

俺がリクルート入社5年目の1989年にリクルート事件が発覚し連日マスコミ会社から批判され、リクルート現場は疲れ切っていたぜ。当時の江副社長が政財界に配った未公開株が問題となったが、社員一人一人はクライアントと向き合い価値提供していたが、営業マンもクライアントからの攻撃でモチベーションダウンしていたぜ。
俺は全社員のために「イカ天(いかすバンド天国)」に出場することを決めたぜ。リクルートDaijoBandでクレイジーなロックを演奏し、リクルートの社員は悪い人ではなく、ピュアな普通の若者だといいたかったぜ。演奏中に赤ランプ攻撃をうけ途中退場となったが、社員から元気が出たとの反響をもらい、元気が落ちた職場に一石を投じることができたぜ。いいか、理不尽こそ最大の自己成長の機会だぜ。ぜひ修羅場を楽しんでほしいぜ、 熱いぜ!