[対談]リーダシップとは、知識ではない―[古野俊幸♯3]

熱いぜ!ミドルマネジメント対談企画。第2回目のゲストに人事界隈ではご存じの方も多いFFS理論をベースとした最適組織編成(チームビルディング)を提供する株式会社ヒューマンロジック研究所の代表取締役 古野俊幸氏をお迎えいたしました。Vol.03では「リーダーシップは知識じゃない」をテーマにリーダシップとマネジメントの違い、リーダシップを発揮するにはどうしたらいいのか?という人材育成の課題について話します。

熱いぜ!ミドルマネジメントとはみどり会の冊子企画として生まれた”ミドルマネジメントへエールを送る”をテーマとして毎月開催される対談企画。対談の様子を全文テキスト起こしで掲載しています。(取材、撮影:平世将夫)
古野俊幸さんのプロフィール
株式会社ヒューマンロジック研究所代表取締役
関西大学経済学部卒。新聞社、出版・教育会社を経て、FFS理論を活用した最適組織支援のコンサルティング会社・CDIヒューマンロジックを1994年に設立。組織・人材活性コンサルティング業務に従事。現在に至る。これまで500社以上の組織・人材の活性化支援を実施してきた日本国内におけるチームビルディングの第一人者。組織人事監査協会理事、人材育成学会会員、NPOプロカウンセリング協会理事、筑波大学アメリカンフットボール部組織・メンタルコーチも務める。
主な著作:「組織潜在力」(プレジデント社)、「入門チーム・ビルディング」(PHPビジネス新書)、「適正配置と組織の最適編成マニュアル」(アーバンプロデュース刊)、「入門チームマネジメント」(PHP研究所)、「セルフコーチング」(PHP研究所)、「組織を変える!社員を変える!組織が変わる!」(中経出版)(ともに共著)など

行動の背景を推察する

古野
何年前かに大学生で「麻雀をします」という人に聞いてびっくりしたことがあります。話をきくと一人で雀荘に行くっていうんですよ。「え、じゃあすごい上手いだね?」って質問すると「いえいえ、素人だから行くんです」って答えがかえってくるんです。「え?なんで?」って聞くと「雀荘にはそういう人が来てる」って言うじゃないですか。

「俺たちはさ、仲間でやってて腕試しに雀荘行くんだよ」って話すと「いまはみんな下手なので、自分でやろうとすると集められないんです」って答えがかえってきました。自分で集めて自宅で雀卓を囲むのは上手い人たちなんですと。「えー!」って。全く僕らの世代と行動パターンが逆になっているじゃないか!という衝撃が5-6年前に聞いた当時の20歳過ぎ子たちの話です。

宮嶋
へぇ?。同じ行動でも動機がまったく違うんですね。

古野
下手なのを知り合いに知られたくないから、練習に行くのが雀荘で。そういう人がたくさん来てるのが雀荘だよって。知り合いにはよく見られたいし、そうでないときは人に会わないとかじゃないの?と聞いたんです。素人だから友だちに教えてもらって、最初のうちはカモられながらも少しずつ強くなっていく。次に腕試しに雀荘に行くんだよと。全然行動パターンが逆なんだよね(笑)

宮嶋
トレーニングの場になってるんですねぇ、雀荘が。

古野
そうみたいですよ。ま、これはたとえ話のひとつなんですけれど、人間関係が希薄になってくる一方、職場には否応無しにそういう人間関係がまだまだ存在していますよね。その環境のなかでいい意味でも改めて一から鍛えられた層と、嫌がって極力逃げてきた人たち。その二極化も進んでるんじゃないですかね。

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宮嶋
ミドルマネジメント層って言葉をつかっていますが、どのあたりの年齢層を対象として話をするのかによって彼らの過ごしてきた時代背景をどう考慮するのか、という問題もありませんか?

古野
ミドルマネジメント層といっても会社ごとに違うものですよね。大手メーカーでいえば40代ですよね。40代に入ったころから課長職に昇格しはじめます。中堅企業だとちょっと早くて30後半くらいですね。そこはすこし幅がありますよね。

宮嶋
この対談の読者層(注:みどり会広報誌Midoriのこと)は歴史のある会社が多いので、おそらくミドルマネジメントというのは大手メーカーの層に近いんじゃないかと考えています。

古野
40半ばくらいですかね。

宮嶋
そうですね。(本を手に取りながら)本をパッとみながらご質問するのも恐縮ですが、不満分子といわれる方たちのほうが実は問題意識をもっていて、問題意識があるからこそ不満分子になっているのだから、きちんとこの方々と向き合って、この人たちを育てていきましょう、という話が掲載されていますよね。

古野
いわゆる会社の言うことをよく聞く優等生というセグメント。(問題意識あるから)ある程度仕事できるんだけど、上司からみたら煙たい、扱いずらいと思われているセグメント。ここに可能性がありますよっってことです。

もちろん不満を言う人って、単なる文句を言いたいだけの人もいますので実際には玉石混淆になっていますよね。でもそのなかにきっと組織にとっての宝がある、そこをしっかりと発掘しましょう、という考えです。先ほど言ったように修羅場に追い込んでいって、真のリーダーに変わる瞬間ってあるんですよ。

宮嶋
ほー

古野
ま、全員が変わるわけじゃないですけどね。でも数人いいなって人がでてきますよ。実はこういったプロジェクト、「次世代リーダー発掘のプロジェクト」というのは東京都内の企業に限らず、地方でも取り組んでいるんです。地方の企業には地元の高卒の子たちもたくさん就職してきています。この層にとてもすっごいヤツがいたりするから面白いんです。

宮嶋
お、そうなんですか。都心部にいると出会うのは大卒の人が多くなりますから、それが全てみたいな錯覚に陥ることもありますよね。

宮嶋邦彦

リーダーシップとは、知識じゃない

古野
プロジェクトは年齢層をある程度揃えますし、次世代リーダー発掘が目的ですから30歳前後のひとたちが集まるんですよね。プロジェクト研修を進めていくなかで、彼らは「俺ら頭悪いし、大学でてないからようわからん。でもここは何となくこうなるのは、おかしいんじゃないの?」みたいな感じで、本質に手を突っ込んでくるんですよ。半年間くらいのプロジェクトを共同ですすめていくと、そのなかで勉強もするし色々と知識もインプットされる。そして今まで経験と重なり始めるとプロジェクトの最後にはリーダーが変わっていったりするんです。

宮嶋
いわゆる化学反応が起きるんですね。

古野
「いやぁー彼、彼女。いいですねぇ」と人事部長と話しますと「あー、あいつさ、昔は暴走族の頭張っていたやつなんだよね」と(笑)相当やんちゃやってきて、何とかウチの会社に入社させて更生させたんだけど、やっぱりな人をまとめる力はあるんだな!って(笑)その他にもレディースのトップだった子とかもいる。何にしろ集団をまとめていた人ってのは、どこかしら力があるんですよ。

宮嶋
人をまとめる力、統率力があるんだなぁ。

古野
だからよく言うんですよ。みなさんが懸命に取り組まれているリーダーシップ研修。リーダーシップという知識を身につけようとさせていますよね。でも現実的には無駄なんですよ。
  
宮嶋
といいますと?

古野
リーダーシップに必要な力、資質というのはもともと持っているのですから。それを発掘して然るべき場に出してあげたらいいだけなんです。さっきの話じゃないですが暴走族のトップって数百人束ねるんだからね(笑)。

宮嶋
規模でいえば社長みたいなもんですね。

古野
中小企業の社長が束ねている人数よりも多いですもん。何かあったときすぐに人も集まりますよ。

宮嶋
有事対応ですもんね(笑)

古野
統率力はものすごくありますよ。だからそういう意味の、我々でいうとFFSデータを研修の際には全部取りますから、データをみると潜在力がある、そういう項目は共通しているんです。全員そういう潜在力があるっていうわけじゃなくて、そういう素材、資質の人が埋もれているってことですね。

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宮嶋
資質、素材を発掘する仕組みと発揮させる機会が必要ですね。

古野
うん。ま、暴走族は非社会的なこともありますのできちんと更生されて、会社に入りました。社会人としてちゃんとまじめにやりますという生活を送り始めるわけです。コレ環境が変わってってことですよね。会社では真っ当な組織論を少しかじったりする機会が増えてきます。するとたとえばいち早く主任とかいうポジションにつきはじめるんですよ。
 
宮嶋
はい。

古野
すると「あいつ、ちゃんと人の話聞いて仲間を束ねてるね」という評価を受け始めます。プロジェクトを始める前に人選しても、きちんと推薦されてメンバーに入って来るわけですよ。そして結果的には仕切っていく。「いやぁ、彼、彼女いいですよねぇ」とこちらとしても判断しますよね。場合によっては「もっと早くプロジェクト任せましょう」とかいう会話になったりします。

宮嶋
プロジェクトという疑似体験の場でもしっかり統率力を発揮するわけですね。

古野
そうです。ま、現実はその先の受け皿が組織としてまだ準備できていない事のほうが多いんですけどね。でも組織全体としてみるならば可能性がある。そういう人は必ずどの会社にもいるはずなんです。経営者、人事部の仕事のひとつとしては、そういう人を見出してくるってことが大切です。実際には「あいつは文句言いだ」と評価されている人ですから直接の上司からみたら扱いずらい人たちですよ(笑)。もっと上の人からみたら“面白いな”と思ってくれるかもしれないですけどね。

そういう人は職位でいうなら、課長の1つ前くらいですから毎日接しているのは、現在の課長や次長だったりしますよね。部長からみたらお眼鏡にかなうかもしれないけれども、年齢的にも数歳上の課長からみたら扱いずらいってのが本音でしょうね。だって器からいうと彼のほうが大きいわけですから(笑)

宮嶋
煙たい人だからこそ、クール・ブレイン側のスタンスでモノを言うんでしょうしね。

古野
理不尽さもわかっているので、“言ってもいまは無駄だ、とわかっていても言わざるをえない”ところって根っこは熱い想いがあるんですよね。“言っても聞いてくれないから”といってふて腐れていく人は、理不尽さをまだ知らないんです。「君の立場で言っても誰も聞かないのはわかってんじゃん。まわりが聞きたくなるように働きかけなよ」ってぼくらはこうアドバイスするわけですよ。「今の君からだったら誰もはなしを聞かないよ」と。

すると文句ばかり言っていた人が本気で何かを変えたいと思っているなら、例えばきちん時間に遅れなくなったり、誰よりも先にくるとか甲斐甲斐しいことをしだすんです。すると、まわりの人の反応も変化して、話も聞いてくれるようになってきます。

宮嶋
自分が変わることで、周囲が変化しだすってことありますよね。

古野
そうですそうです。「あいつ、前は煙たかったけど、確かに筋通ってるよね」とまわりが聞く姿勢に変化するんですよね。印象が変わるので話を聞こうかという具合に心の準備が整い始めるんです。すると影響力も変化しますよね。そういった経験があるかないかは結構大きい。30半ばから後半くらいにそういう経験をさせてあげることがまさに熱いミドルマネージャーの引っぱりあげ方ですかね。