[対談] ― 風通しの良い職場環境 ― 大條充能氏#3]

熱いぜ!ミドルマネジメント対談企画。第1回目めのゲストは組織活性化支援を行っている株式会社ゼロイン代表取締役会長兼CEOの大條充能氏をお招きしました。書き起こしVol.3は「組織の風通し」について。コミュニケーションに悩むミドルマネジメント層の方にお届けしたい内容となっています。おたのしみください。 

熱いぜ!ミドルマネジメントとはみどり会の冊子企画として生まれた”ミドルマネジメントへエールを送る”をテーマとして毎月開催される対談企画。こちらでは対談の様子を全文テキスト起こしで掲載しています。(取材、撮影:平世将夫)
大條充能さんのプロフィール
株式会社ゼロイン代表取締役会長兼CEO 
1984年リクルート入社。総務部にて社員向け全社イベント企画を担当。リクルートのお祭り男として稀有の才能を発揮し注目を集める。91年、リクルート社内報『かもめ』で人生相談コラムを開始。リクルートナンバーワン有名人の座を不動のものとする。1999年、企業の節目に社員総会などのコミュニケーション施策によってインナーブランディングをプロデュースする会社、株式会社ゼロインを設立、代表取締役社長に就任。著書「熱いぜ!!!悩まない人生」「食いしばるために、奥歯はあるんだぜ!」「まだお前は始まったばかりだぜ!」、ブログ「熱いぜ!」等。

大條
昔の、わたしがリクルートに入った当時の企業でたとえると、「企業」が今のマイルドヤンキーが大事にする「地域」の役割を果たしていた時代があったと思うのです。そのひとつに終身雇用制度があって。企業がコミュニティとして1つの村を形成していたイメージでしょうか。そこに運動会もあり、大充実した福利厚生制度があり。人事異動でどこに行ったとしても、その村に守られるという安心感ありましたよね。会社に属しているという帰属意識そのものが絆だったんです。するとマネジメントはすごくしやすい。

宮嶋
言葉で伺うと、かなり以前の出来事のような思いがしますね。

大條
90年代、失われた20年といわれる最初の10年で、どこの大企業も終身雇用制度を止めて、福利厚生制度を止めて。その絆や一体感みたいなところをどんどん消し去ったのですね。そしてアメリカ型のマネジメントシステムを入れたりして。どんどん転職社会になり、「自分は自分」っていう意識が強くなってきましたよね。そこに就職氷河期もやってきた。
 
若者達も迷いながら“自分探し”が始まり、信じられるのは地元だ!地元の仲間だ!と変化してきたんじゃないか、と想像します。ですからこの中から80年代の村を形成してみたいという取り組みは是非やるべきだと思います。
 
とはいいつつも、上の世代が昔経験してきた会社の一体感は一夜にしてはできないということは認識すべきです。「ぼくらの世代はこうだった」というノスタルジックなものや、押し付けではいけないんです。「彼らにはもっと大事な絆を深めたいものがある」という彼らの価値観を理解しながら、もう1つサブ的な村、コミュニティを会社で形成するようなイメージなんじゃないかと思います。

宮嶋
いま色々な会社が社内運動会を復活させたり、社員旅行を復活させたり、という流れになっていますよね。ベンチャー企業でも社内部活動とかサークルが活発に行っているケースもあるようですね。

大條
ありますね。ある種、そこをよしとする社員層と社員旅行や運動会には行きたくないという社員層とが必ずあります。それすらも「全て画一的に評価をしないということがダイバーシティー」ですヨ。来たくない人たちも会社は理解しているよ、ということをきちんと伝えなきゃいけない。伝えるだけじゃダメで選択権を与えなきゃ。ただの強制は反発を呼ぶだけでしかないですからね。

宮嶋
ありがとうございます。続きまして、労務問題について話題を変えてお話をお伺いさせてください。法律的な基準だけで言えば、もしかしてほとんどの企業がブラック企業に分類されるのが現実だと思います。そのなかでも労務問題が顕在化する会社としない会社って特徴や傾向があります。言葉は陳腐かもしれませんが、「風通しがいい会社」「コミュニケーションがとれている会社」と、そうでない会社でかなり労務問題が顕在化するかどうか差がでてくると経験から感じています。
 
例えば大條さんの会社、ゼロインさんの場合では、どのような感じで対応するのがよいと考えますか?そのスタンスについてちょっとお伺いしさせてください。

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大條
当社の場合、マネージャーにかなりそこを要望しています。ソコってのはいわゆるメンバーとのコミュニケーションを週単位でしっかりとるってことです。例えば半期目標の中に、業績目標と、自分がどういう成長を遂げたいかという2つの目標を書いてもらいます。そしてPDCAを月・週のサイクルでまわすマネジメントを行っています。また社長が半期に一度は全社員と面談するということをやっています。
 
それは色んな場面で、色んなところで不満や迷いを言える機会をつくる、そして、あがってきたものに対して、できるもの、できないものをフィードバックするということも大事だという考え方なんです。「風通し」というのはつまり—そういう事なのかなと考えています。

 
宮嶋
「コミュニケーションを良くする」だとか「風通しのいい社風」とよく聞きますが、それをきちんと具体的な行動として定義されているのですね。

大條
はい。まず、話す機会があるということ、これは大事ですよね。経営側・マネジメント側も色んなことの改善要望があったことをできること、できないことをきちんとフィードバックすることが大事です。できることがちょっとでも前に進んでいるということが非常に社員に対するメッセージになります。でも経営陣が全部不満を受け止めていたら、こっちの身体がもたないことになる。でも中には「それはすぐにやった方がいいね!」ということもあります。
 
できないことは「こういう理由でできない」とキャッチボールするとお互いに分かり合えるものがある。そういうところがちゃんとコミュニケーションされているかどうかが「風通し」だととらえてやって行くべきだろうと考えているんです。

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宮嶋
すごく当然な話ですが、それをきちんとやることが大事ということですね。言葉はあるけれど定義を決めて、きちんと行動している会社は案外少ないという印象を持っています。「言われてみれば当たり前」とはよく言いますが、じゃあどうしてその「当たり前」ができないのかってことにもなりますね。

大條
そうです。ただ、これができる人とできない人、マネージャーによってすごく濃淡があるのが現実です。そこで人事部には現場のマネージャーがメンバーとの関わりのなかで、きちんとマネジメントの役割を果たせているのかということを「後方支援をしていくこと」を期待しています。そこはスゴく重要な役割です。 
職場でのことはなかなか上司に言えないってあるじゃないですか。後方支援機能、マネジメントを機能させる環境をつくっていくことが大事だと思います。

宮嶋
最近パワハラという問題もよく聞きますね。これも言う人によって受け止めが違う。信頼のある上司から言われる場合と、信頼のない上司から言われる場合。前者であれば叱咤激励で、後者の場合はパワハラ。何も道を示さないでただ叱るだけだと、これは響かない。

大條
ミドルマネジメント層の方々に対してお伝えしたいのは「上から言われたから分かっているな」ではなく、自分の言葉で話す必要があるってことです。メンバーとの信頼関係をつくるのはあくまでもミドルマネジメントの方々じゃないですか。経営からの方針を自分が理解し、自分の言葉で伝えているかということがとにかく前提条件です。

宮嶋
それは大事ですね。話したことイコール理解してもらっている、という前提で物事が進んでいるケースは多いですものね。

大條
メンバーからあがってくる要望も、自分が理解できるものについてはアクションして変えていく。違うものについては、自分の言葉で向き合っていくということがマネジメントとして求められるんです。そこがちゃんと機能しないと、信頼関係ができないですよね。そこが始まりなわけですから。この対応の濃淡によって、いい職場と悪い職場の違いがくっきり出ます。 
ですから人事部の立場としては濃淡をなるべく埋めていく、マネジメントの平準化というか平均値をあげていくといったマネジメントを機能させるための後方支援が非常に重要なんです。

宮嶋
濃淡は確かにあるものですね。たとえばどういう方法でマネージャーたちにコミュニケーションスキルをあげてもらうののですか。

大條
一般的にはマネージャー研修を実施することがまず最初に行うことでしょうね。当社もマネージャー研修は非常に重視しています。自分が経営の船に乗っているという自覚をもってもらうこと。自分が理解できないことはどんどん質問し、きちんと理解できたら、自分の言葉でメンバーにおろしていく。インプットとアウトプットの反復です。経営側はマネージャーに対してしっかりコミットしていく場面を意図的に増やしていきます。そうじゃないとマネージャーのなかでの理解の浸透度に浅深がでてきてしまいます。
 
例えば経営方針がグループにスムーズにフィードバックされて、翌日には全メンバーにきちんと意図も含めて伝わっているところもあれば、そうでないところもある。情報の濃淡というのは当事者意識に大きく影響しますので、マネージャーが集まる会議の中で、自分たちのグループ運営はどういうドキュメントを使っている、どういうことを、どのタイミングでやっているのか、ということまで情報を共有すると「こういうやり方をやっているんだ!」ということをマネージャー相互が知る機会ができます。

宮嶋
そういう場をきちんと意識して、設けられているのはいいですね。発言、質問することがタブーになりませんものね。

大條
そういうこと繰り返し繰り返しをやっていくと、徐々にマネージャー間のの濃淡が減っていく。やり方が間違っていると伝わらないってことが案外多いですよね、それを是正していく機会をきちんと持つ。経営側が、マネージャーに対してしっかりコミットするということ。一過性の研修だけでなく、日々のマネージャー会議では、きちんとマネージャーから発表してもらって相互に知識を共有してもらう機会をしっかりつくることでじつに様々な気づきがあるものなのです。いいところはお互いに共有、シェアしあうという風土を醸成していくということも同時に大事だと思います。

宮嶋
素晴らしいですね。共有すると、そもそもの場を設けるといういうことが、いかに大切なのかわかります。