[対談] ― 熱いぜ!ミドルマネジメント ― 大條充能氏#1]

熱いぜ!ミドルマネジメント対談企画。第1回目めのゲストは組織活性化支援を行っている株式会社ゼロイン代表取締役会長兼CEOの大條充能氏をお招きし”価値観の多様化とダイバーシティにマネジメントにどう適応していくか”をテーマに概論だけではなく、具体的な事例を交え人事部門が参考になりそうな話を盛りあがりました。

熱いぜ!ミドルマネジメントとはみどり会の冊子企画として生まれた”ミドルマネジメントへエールを送る”をテーマとして毎月開催される対談企画。こちらでは対談の様子を全文テキスト起こしで掲載しています。(取材、撮影:平世将夫)
大條充能さんのプロフィール
株式会社ゼロイン代表取締役会長兼CEO 
1984年リクルート入社。総務部にて社員向け全社イベント企画を担当。リクルートのお祭り男として稀有の才能を発揮し注目を集める。91年、リクルート社内報『かもめ』で人生相談コラムを開始。リクルートナンバーワン有名人の座を不動のものとする。1999年、企業の節目に社員総会などのコミュニケーション施策によってインナーブランディングをプロデュースする会社、株式会社ゼロインを設立、代表取締役社長に就任。
著書「熱いぜ!!!悩まない人生」「食いしばるために、奥歯はあるんだぜ!」「まだお前は始まったばかりだぜ!」、ブログ「熱いぜ!」等。
[対談Vol.1]熱いぜ!ミドルマネジメント
[対談Vol.2]ダイバーシティとは理解すること
[対談Vol.3]風通しの良い職場環境
[対談Vol.4]コミュニケーションの変化で組織活性化を

宮嶋
本日はよろしくお願いします。現在のミドルマネジメントの現状と課題とはなんでしょう。特に若い世代20代~30代の方と、わたし達40代~50代の時代とは育ってきた環境も価値観も、大きく状況が変化してきていますよね。そうすると「どう接していいかわからない」だとか「言葉が通じているようで、通じない」といったようにマネジメントについて、ちょっとしたストレスを感じているミドルマネジメント層の方も多いのではないか、という仮説を入り口にお話がお伺いできればな、と最初の質問を考えてきました。

大條
今日お話をするにあたってマイルドヤンキーについて書かれた本を読んだんです。ぼくらの時代のヤンキーを1.0、チーマーと呼ばれたヤンキー2.0、そしてマイルドヤンキーがヤンキー3.0と定義づけて世代ごとの価値観や消費動向などを考察した本です。その本を読んでみてね、ふと考えたんですよ。たとえば各時代のヤンキーを追ってみると、案外すごい変化があるんですよね。例えばマイルドヤンキー呼ばれる現在の世代の特徴は行動圏が半径5km圏内。東京の三鷹市に住んでいるとするなら、三鷹市から5km圏内の友だちが大好きで、この地元が大好きで。反面新宿、渋谷はアウェーのエリアと考えている。なるほどなぁ~と思いましたね。

ヤンキー経済 消費の主役・新保守層の正体 (幻冬舎新書)

宮嶋
へぇ、あの本ですね。どのへんがなるほどなぁという風に感じられたのですか?

大條 ここに今起こっている若い人たちの意識の象徴があるような気もします。また、我々世代が意識したほうがいいんだなぁと思ったのはイオンというモールの存在がとても象徴的になっているんだということです。半径5km圏内にはイオンがあり、みんな休日にはイオンに行くことが楽しみだったりする。マイルドヤンキーの将来の夢は?と聞くと、男なら月給をあと5万円あげたい、とかね。

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宮嶋
イオンモールですね。

大條
そうですそうです。その一方、先日(注:2014年7月下旬)南米に外遊された安倍首相が「日本人にはもっともっと外に出てほしい」というようなメッセージを発信されましたが、たぶんこのメッセージはマイルドヤンキーと括られる世代には届かないですよね。半径5km圏内で、ずーっとすごく信頼できる友だちを大事にして、月給5万円あげることを夢にし、週末イオンで過ごすことを目指すといった価値観の若者たちにとって、「もっと海外に目を向けろ」とか「海外に留学しろ」というのはなかなか遠い。これが我々の世代と、若者との間で起きている価値観のギャップというところをまずは理解しておきたいですよね。いいとか悪いとかじゃないんです。まず違いがあるということを理解しなきゃいけないんだな、と。

宮嶋
良し悪しではなく、違いがあるということですね。

大條
その点はきちんと分けて理解しておきたいとことですネ。そして企業の採用でいうなら自社の成長志向にあった人をエントリーの段階で人事部はチェックしますから、選考のなかでは社会的な傾向よりは意識のギャップは薄まっていると思いますよ。ただ世代としての傾向は時代の変化を受けますからミドルマネジメントといわれる40代から50代の人たちの中で、20代の方との世代間ギャップを感じるということが起きているんだろうな、なんてことは容易に想像がつきますよね。

宮嶋
はい、想像できますね。

大條 でもそれは過去からずっと起きてきていることじゃないですか。自分たちが過ごしてきた20代と現在の20代も同じだという幻想を抱いてマネジメントしていこうと考えてしまうと、そりゃあ言葉が届かない、通じない。結果的に「何を考えているか理解できない」ということになってしまいますよね。まずマネジメントの方々はそこを理解することが必要だと思います。

宮嶋
マイルドヤンキーというのは首都圏以外の話だと思っていました。

大條
いやぁ、都心部でもあるみたいですヨ。たとえば東京都の中でも、セントラル、中心部に行くのは気が引けるという声を非常に聴くことがあります。飲みにいくのも、半径5km圏内で地元の友だちと飲むのが大好きだとかもそうでしょう。

宮嶋
わたしも仕事柄、求人のお手伝いをすることがありまして。最近を以前と比較して感じるのは、都心部に働きにきたいという人が減っているってコトですね。特に銀座界隈の飲食店は人が集まらなくてしょうがない、という嘆きをよく聞きます。やはり、働く場所を選択する際に“自宅から近い方がいい”という志向が増えてきているのですか。

宮嶋邦彦

大條
マイルドヤンキー層といわれるグループはは、明らかに自宅から近いという事を要望しているようですね。そういうことを見据えて、タウンワークは「職住接近」といったマーケティングプロモーションを展開し、地域で一番になろうっていう方向性で動いています。ローカルエリアで重要なのは、その街を愛している人を採用するのがベストですよね。一番ロイヤリティーの高い人が採れることが大切になってきています。そういう意味では都心部の飲食店舗の採用は厳しいんです。どうしてかっていえば、地元意識が醸成されていないからなんです。

宮嶋
うーん、なるほど。

大條
例えば、当社も去年までは派遣、アルバイトとして採用活動をおこなっていた職種がありますが、今年になって一般職として「人事異動が地域を越えてない」「時間が残業なしできっちり終われる」といういくつかの定義を明確にして採用PRをきちんと打つと、想像していた以上に優秀な人が集まってきます。 (昔でいうところの)総合職採用として「将来社長になりたい!」というような人もいますが、地元を大事にしたい、オンとオフをはっきり分けたいという人の比率ががものすごく多くなってきています。いま「ダイバーシティー」「ダイバーシティー」とよくビジネス誌などで目にしますよね。

宮嶋
確かに以前と異なり価値観が多彩になってきています。

大條
多様性というのを属性だけではなく、価値観の多様化からアプローチしていくのなら、こうしたセグメント層となる人たちの気持ちだとか価値観をしっかり理解したうえで、人事制度を設計して、多様な価値観に対応できる働き方を提供していくというのも「ダイバーシティー」のひとつのあり方ではないかな、と思います。画一的にみんなが「総合職でマネージャーを目指せ」「役員になるのだ」といった価値観に背を向けた反応をする人も増えましたよね。時間限定で地域間異動がなく自分の地元を大事にしたい、もしくは自分の家庭を大事にしたいという価値観が増えてきたじゃないですか。色々な価値観の様々な人が働ける環境をつくっていき、相互の価値観を理解して受け容れることができる企業風土のもとでマネジメントをしていくということが、これからは求められているんじゃないかなと思います。

宮嶋
価値観の多様化に適応して、マネジメントも変わらなきゃいけないですね。

大條
じゃないか、と考えています。

宮嶋
そこで具体的にいうならば金銭へのインセンティブよりも、時間に対するインセンティブになるのでしょうか?

大條
ちょっと事例をご紹介させてください。一般職、つまり事務職の方々の例ですと「なぜ応募されたのですか」と質問しますよね、面接官としてのセオリーで。すると「土日はしっかり休みたい」「最低でも週2回は絶対に休みがほしい」といった金額面より時間面の労働条件を予め検索してきたという方が非常に多いんです。いくら金額、給与だけが高くても、その前提となる根本的な価値観が合わなければ、都心部での販売職はなかなか難しいですよ。お金だけじゃないんです。

逆に言えば、ローカルエリアの採用では、時給じゃないところで訴求するという方法になるんです。都心部でいうなら、労働時間を明確にして、シフトで残業が個人に過剰に行くことがないような状況をつくるということをしっかり約束することが、採用のアドバンテージになったりということではないかなと思います。もちろん約を違えてはいけません。

宮嶋
わたしなんかも世代的にはお尻叩く、叩かれてきた方なのですが言ってみれば「幸せな暮らししたいだろう、いい車乗りたいだろう、大きい家ほしいだろう」というマネジメントはもう通じなくなってきているということですよね。ひとつの価値観だけが共通じゃない時代になってきたという意味で。

大條
そうですね。そのマネジメントは最初の世代分けでいうとヤンキー1.0の時代ですね。象徴としては矢沢永吉の「成り上がり」の時代がヤンキー1.0じゃないですかね。誤解を恐れずにいうと「君たちお金ほしくない?」という時代。ヤンキー3.0には「社長になろうよ」とか、もっと「成長して自己実現したい」というメッセージは響きにくくなっているということを理解する必要があります。

反面「自分は上にあがって将来独立したい」という若者もいる。そういう人にはそういうマネジメントをするべきなんです。そうじゃない人には、そうじゃないステージでも活躍できるようなステージをたくさんつくってあげることが「ダイバーシティー」だ、ということは理解する必要があると思います。

宮嶋
「ダイバーシティー」というと、つい属性の話になりがちですよね。