[対談]そうやって生きているんだよ、世の中は―[井田高志#4]

今回の「熱いぜ!ミドルマネジメント」は(一社)リファイン就労支援センター代表理事の井田高志さんがご登場。井田さんは2013年からつ病の方の回復・改善や就職の支援事業を行われています。

熱いぜ!ミドルマネジメントとはみどり会の冊子企画として生まれた”ミドルマネジメントへエールを送る”をテーマとした対談企画。対談の様子を全文テキスト起こしで掲載しています。(取材、撮影:平世将夫)
井田高志さんのプロフィール
一般社団法人リファイン就労支援センター 代表理事
1987年株式会社リクルート入社。株式会社リクルートスタッフィングの立上げから23年間、人材派遣・人材紹介に携わり、30,000人以上の派遣・紹介の実績を誇る。2009年から3年間、慈恵医大と連携した株式会社メディカルサーバント代表取締役社長として、医療に関わり医師・看護師をはじめとしたうつ病やメンタルヘルス不全者の回復・改善には欠かせない多くの人脈を得る。自らが27歳の時にパニック障害とメンタルヘルス不全を経験したが、それを乗り越えて、うつ病をはじめとしたメンタルヘルス不全に苦しむ方の少しでもお役に立ちたいという想いと使命感から50歳を機に、社会起業家として一般社団法人リファイン就労支援センターを設立。

病院のリワークは、正直言って雰囲気が暗い

井田ウチは日本で唯一メンタルヘルス不調のビジネスマンが多いと言っているのですが、これには背景があるんです。

宮嶋
はい。

井田
世の中には僕らと同じような事業者が約2,000箇所あります。その多くは障害者手帳を持っていないといけないと言っているんですね。殆どの事業所がご利用者の9割は利用者負担0円です。前年度の可処分所得が0円の人とか、300万円未満の人とかは0円なんです。

宮嶋
そうなんですか。

井田
うちはご利用者のうち7割の人が、お金を払っています。つまり前年度所得が高いんですよね。ということはビジネスマンが来ているということです。300万円以上600万円まで、600万円を越えた人はもっと、というね。うちの事業所をご利用いただく場合、法人負担は1日だいたい900円くらいなんですね。週5日で20日間利用すると18,000円です。600万越えている人は9,300円で打ち切りなんだけど、そういう人がうちには全体の7割いるんです。

宮嶋
具体的な数字を伺うと、確かにビジネスマン層の利用多いですね。

井田
その層の人たちは今までどこに行っていたかというと、病院のリワークに行っていたんです。正直言って、病院のリワークは雰囲気が暗いわけですよ。医師の方に言ったことがあるんです。

宮嶋
へぇ。何と言ったんでしょう。

井田
「先生。復職支援も含めてですが、先生たちは会社で働いたことないですよね。僕は23年間人材ビジネスをやって、“会社に行きたくない”という派遣スタッフの方々にどうやって働いてもらえるかってことを、ずっとやってきたんです。先生は営業の仕事わかりますか?どんなストレスがかかるかって想像つきますか。」

宮嶋
ほう。

井田
鬱病で1ヵ月とか3ヵ月家から出れない、唯一出かけるのが医師のところで。それから、やっと元気になってきて「次はどうしましょう」と聞くと「じゃあ図書館行ってみましょうか」って答えるでしょ。「先生!それはダメだなぁ」って言うわけですよ。

宮嶋
図書館に行ってみましょうってアリな気がするんですけど。

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復職を目指すなら週5日、が必要なプロセス

井田
確かに図書館に行くことで、歩きますから運動にはなりますよね。外に出ることで社会とも触れている感じはします。だけど図書館って喋っちゃいけないですよね、図書館だから。

宮嶋
あぁ、そうですね。静かにするのが前提ですね。

井田
でも会社ってコミュニケーションの場だから。コミュニケーションしないことをやらせるくらいだったら、リファイン就労センターに任せてくださいよ、と言うんです。

宮嶋
なるほどなぁ。

井田
普通の施設や病院には週3日とか午前中だけ来院される人が大勢います。でも、ここ大切だと思うんですが「◯◯さんが復職する会社って週3日でしたっけ?」となりませんか。

宮嶋
うーん。

井田
週3日勤務とは違いますよね、ほとんどの会社って。「じゃあ週3日でリワークしたって言えると思うの?毎日来ないとダメだよね。復職するところは週5日の会社でしょ」と僕は言うんです。リファインさんは日本一厳しいって言われていることもあるんだけど、世の中ってそんなもんですからね。そこで優しくしてどうすんだよ、とも思うんです。

宮嶋
確かに復職を目指すのであれば週5日は必要なプロセスですね。

井田
で、その医師の方に「リファインさんはしつこいよね」って言われたの。それを僕は褒め言葉だと受け止めて。

宮嶋
粘るとか徹底的に寄り添うって意味もありますね。

井田
医学的にはそこまでやる必要はないんじゃないかと思われるケースもあったようなんです。「しつこいけれど、リファインさんに紹介した人は全部元気になって復職していく。あれみたら信用するしかないですよ」って仰られて。「医学で説明できないですよ。医学を越えています」って言っていただいて。

宮嶋
へぇ。

完全回復してから働く”じゃない、“治しながら働く”んです

井田
医学なんて糞食らえだってどっかで思っているんですよ。例え癌になっていたって働かなきゃいけない時ってあるじゃないですか、サラリーマンは。家庭があってね、ローンがあったらね。基本働くよ。だからメンタル不調だって働くしかないんだよ。働くことを前提で考えないといけないんだよ、って思っているんですよ。

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宮嶋
いや、現実的にはその通りです。

井田
病気が治るか治らないかとかね、多くの方が勘違いしてしまっているのが“完全回復してから働く”って思っているんです。そうじゃない、“治しながら働く”んですよ。

宮嶋
なるほど。

井田
そういうところを素人発想で考えちゃうから分からなくなってしまっている。いいじゃん、病気だって働けば。そうやって生きているんだよ、世の中って。

宮嶋
様々な事情を抱えていますものね、誰しも。

井田
そんなキレイに0か1か、なんて割り切れて生きていないんだから。40代、50代になれば誰もが身体のどこかしらは痛い。それでも働いているんだからって。

宮嶋
はい。

井田
「定着支援」も就労移行支援事業でいうと、本来は復職の場合はやる必要はないんですよね、就労しちゃったら関係ないと割り切ることもできる。だけど僕らが関わった人は復職だろうと就職だろうとやるんだ、と決めているんです。「定着」ってのも、6か月で「定着した」なんて全然思ってないから、「あなたが嫌でなければ一生涯やるから」って、言っているんです。

宮嶋
なるほどなぁ。この12月から労働安全衛生法改正によるストレスチェック義務化が控えているんですが、今日お伺いした、組織のあり様の変化、メンタル不全の背景、復職支援への取組み方のお話から、今後組織はどうあるべきかということを思考するモデルの一つが朧げに見えてくるような気がします。

井田
であれば嬉しいですね。

宮嶋
本日はありがとうございました。

熱いぜ!ミドルマネジメント-大條充能氏のコメント
メンタルヘルスマネジメントは年々その重要性が増していくぜ。更に20年後の2035年をイメージした時、メンタルヘルスマネジメントは日本のビジネスマンのコアスキルになっている可能性が高いぜ。それは、子供たちが大人になった時に職業調査という統計があり、ロボット化やIoTによっても解決できない人の心に寄り添う仕事が主流になっているという結果が出ているからだぜ。
小さな変化に気づき、声をかけてあげること」はまさに人の心に寄り添うマネジメントであり、未来においてロボットには絶対できないコア技術だぜ。「そんなことがコア技術?」と疑問を持つかもしれないが、人間だからこそできることの価値を今一度見直してほしいぜ。メンタルヘルスマネジメントしっかり取り組んでほしいぜ、熱いぜ!