[対談]キャリアの「開発」と「デザイン」と「マッチング」―[井田高志#3]

今回の「熱いぜ!ミドルマネジメント」は(一社)リファイン就労支援センター代表理事の井田高志さんがご登場。井田さんは2013年からつ病の方の回復・改善や就職の支援事業を行われています。

熱いぜ!ミドルマネジメントとはみどり会の冊子企画として生まれた”ミドルマネジメントへエールを送る”をテーマとした対談企画。対談の様子を全文テキスト起こしで掲載しています。(取材、撮影:平世将夫)
井田高志さんのプロフィール
一般社団法人リファイン就労支援センター 代表理事
1987年株式会社リクルート入社。株式会社リクルートスタッフィングの立上げから23年間、人材派遣・人材紹介に携わり、30,000人以上の派遣・紹介の実績を誇る。2009年から3年間、慈恵医大と連携した株式会社メディカルサーバント代表取締役社長として、医療に関わり医師・看護師をはじめとしたうつ病やメンタルヘルス不全者の回復・改善には欠かせない多くの人脈を得る。自らが27歳の時にパニック障害とメンタルヘルス不全を経験したが、それを乗り越えて、うつ病をはじめとしたメンタルヘルス不全に苦しむ方の少しでもお役に立ちたいという想いと使命感から50歳を機に、社会起業家として一般社団法人リファイン就労支援センターを設立。

「アセスメント」から、認知行動療法をベースとした「心理トレーニング」を。

井田
就労・復職支援をやっていくときに、人間力がないとご相談者に受け入れられないじゃないですか。設立から今ちょうど1年半ですね。設立が2013年10月。同年の12月に開所式をやりました。ご利用者は復職者と就職する人と半々ですね。

宮嶋
はい。

井田
東京都の指定を受けてはじめて、去年2014年1月くらいから実際に利用者さんが2名、3名、5名っていう感じで増えはじめまして。本格的に20名越えてきたのは去年の5月くらいです。1年ちょっとで32名の社会復帰をお手伝いできました。そのうち17名が復職者、15名が再就職者(転職者)ですね。

宮嶋
32名もですか。いろいろ皆さん異なる背景がおありなのでしょうねぇ。

井田
一人ひとり全く違いますね、探していけば共通項が幾つかはあるかもしれませんが。

宮嶋
具体的にはどういう支援をされるのですか。

リファインの支援モデル

井田
うちは「アセスメント」から入って、先ほどの認知行動療法をベースとした「心理トレーニング」を行います。考え方としては、例えば「コップに水が半分しか入っていない」ととるか、「まだ半分もある」ととるか、同じ事象なのに人によって捉え方が真逆になりますよね。

宮嶋
はい。

井田
そうした受け止め方、つまり認知によってストレスが全然違いますってことなんです。「ラッキー」って思う人と「これはマズい!」って思う人がいるように、事象は一つなのに捉え方次第ですっていうのが認知なんですね。

宮嶋
あぁ、なるほど。

井田
苦しくなっている人の傾向性として、狭い方に受け取っていることが多いのです。「まだあるじゃん!」って言っているのに、「いやないない…」ってね。そこで『ある』っていう考え方をしてみませんか?っていうことを色々なカリキュラムを通してやっています。

宮嶋
へぇーなるほどなあ。

「キャリア開発」「キャリアデザイン」「マッチング」の3つの段階で支援

井田
就職者に対しては3段階「キャリア開発」「キャリアデザイン」「マッチング」の3つがあります。まず「キャリア開発」は徹底的に寄り添ってやるスタンスです。

宮嶋
寄り添うといいますと。

井田
例えば営業職の転職者に対して人材紹介会社のキャリアカウンセラーがアドバイスをする際に業績を「何人中何位」っていう風に数値化して書きなさいっていうことがあります。

宮嶋
第三者にもわかりやすくってことですよね。

宮嶋邦彦

井田
そうですね。そこを僕らはもう1つ深く入っていきます。「100人中1位でした」という結果に対して「その時のあなたの気持ちはどういう気持ちでしたか」と伺います。

宮嶋
結果だけではなく、心理面も伺うのですね。

井田
そうです。誰に感謝していたのか。職場のメンバー、上司に対してどういう気持ちでしたか?また周りの人たちもあなたの気持ちに対してどういう風に思っていた様子でしたか、と伺っていきます。

宮嶋
へぇー。

井田
心の満足感、現実に対する捉え方まで入っていくんですよ。徹底的に寄り添ってね。するとあなたが何者か、何に価値を置いているか、がわかってきます。すると仕事に対する「職務適応」だけじゃなくて、「職場適応」、何をしたいか…が整理できるんですね。

宮嶋
なるほどなぁ。

井田
現在、転職する人って「年収」とか「仕事内容」「勤務地」「ポジション」こういったファクターで選んでいるわけです。僕らからすると、それはそれで決まればいいんだけれども、そうじゃなくて失敗してメンタル不調になっているって現実があるわけですよね。

宮嶋
そうですね。

井田
コミュニケーションがうまくいかないことが原因でメンタル不全になったしたら、次は「人が優しく、みんな面倒見がいい職場がいい」とか言いますよね。「よし、じゃあそういう会社を選ぼうよ」となります。

宮嶋
はい。

井田
でも、どういう会社がそういう社風なのか直ぐには分かりませんよね。だったら徹底してそういう会社を調べていこうね、という風にやるから、最終的には皆さん第一志望に行くわけですよ。

宮嶋
へぇー。

井田
お金じゃないのです。根底にあるのは「再発したくないんだ」って思いです。だから、そういう環境が整っている会社が『第一志望』になっていくんですよ。

宮嶋
なるほどなぁ。

井田
本当に自分を見つめて向き合っていくときには、「キャリア開発」をして、今度は「出来る事」と「したい事」を分けていきましょう、ってステップになりますね。

宮嶋
自分の深層心理と向き合うわけですね。

就労されたら「定着支援」としてフォロー

井田
就労、復職ってところについては、設立当初は障害者雇用枠なのかもしれないと思っていたんです。でもね当事者にとってみれば鬱病になった時以上に、それはショックなんですよ。自分はもしかしたら障害者雇用でしか生きていけないのかってことはショックです。

宮嶋
はい。

井田
ここはウチの担当の人も変えて手厚く支援しようということで2段階用意しています。「キャリア開発」は徹底的に棚卸しをしますが、「キャリアデザイン」になると担当を変えて俯瞰してみていきましょうというスタンスですね。

井田高志氏

宮嶋
なるほどなぁ。

井田
最後に「マッチング」です。ここで初めて人材紹介会社へ行ったり、転職情報サイトに登録したり。人によってはハローワークに行ったりとかの行動になります。で、最後にどの仕事選ぶんだっけ、という時に僕がコミットしていくんです。

宮嶋
ほうぅ。

井田
「あなたの人生なんだから、あなたが決めるんですよ」と。きちんと自分で決めるように促していきます。その後就労されたら「定着支援」って言ってフォローしていきます。

宮嶋
あぁ、そこが「定着支援」なんですね。

井田
はい、言ってみれば「人材派遣モデル」なんですよね。就職してからすべてが順調かといえば、そうでもない。結構出来ないことも多いわけですよ。こうしたところまでもしっかり支援しますから、やりましょう、というところまで入っていきます。

宮嶋
なるほど。確かに「人材派遣モデル」に例えることができますね。

病気が違うと回復・改善の方法も、就職観も違います

井田
ご利用者の7割は医師からの紹介なんです。残りの3割は医師の紹介以外なんですが、病気が混ざっていることが多いんです。「鬱病」とか「パニック障害」とか、「双極性障害」とか「発達障害系」とか沢山あるんですね。

宮嶋
えぇ。

井田
僕らは医師ではありませんから、診断はできないんですよ、わからない。でもね医師は週に1回しか接していないけれど、僕たちは毎日接しているんで、「あれ?なんか違うな」と思うこともあるですよ。

宮嶋
確かに医師は数十分、長くて数時間程度ですものね。

井田
えぇ。で、あれ?と思ったときに「ドクターに聞いてみなよ」と促すんです。病気が違うと回復・改善の方法も違いますし、就職観も違ってきます。その3割の方のうち9割くらの方は転院されていますね。

宮嶋
へぇー。

井田
それから多くの人がね、『傷病手当』のこととか、わかっていないわけですよ。会社もわかっていない。先日もある人が辞める時に「傷病手当がもらえなくて…」という話を聞いたんです。「いやいや傷病手当はキチンと貰えますよ。傷病手当は会社からの手当じゃなくて、健康保険からだから・・・」って話になりまして。

宮嶋
あまり知られていないかもしれませんね。

井田
そうなんですよね。「会社の人がそう言っていて…」って言うから、「じゃあ僕が着いていってあげるからきちんと話しましょうってことになりまして。提携している医師と僕と3人で行って「会社が払うんじゃないんですよ。健保が払う手当なんです。会社は事務処理をしっかりやってくれたらいいだけなので、いついつまでにやってくださいね」って話をしました。それで「あ、そういうことなんですか」みたいな話になったりですね。

宮嶋
そういうことも支援するんですか。

井田
えぇ。医師も結構同行してくれるんです。復職者の場合でも結構同行したりとかですね、そういう感じでコミットしています。

宮嶋
それは任せて安心ですよね。

 
(以降、そうやって生きているんだよ、世の中はに続く