レポート「企業と社員を取り巻くストレスを考えるシンポジウム」(その3)~ディスカッション~

「ストレスチェック」という切り口で6月12日に開催された「企業と社員を取り巻くストレスを考えるシンポジウム」。3番めのセッションは、小林 惠智博士と江口尚博士によるディスカッションが行われました。モデレーターの古野俊幸氏(ヒューマンロジック研究所)による質問に対して、2人が答えるという形式でディスカッションが行われました。
レポート「企業と社員を取り巻くストレスを考えるシンポジウム」(その1)
レポート「企業と社員を取り巻くストレスを考えるシンポジウム」(その2)
 

IMG_5295ストレチェックの結果によって処遇が変化することを嫌い、検査を受けない人もでるんじゃないか

小林慧智博士
  • 根っこでいえば、経営者・組織との信頼関係が問題になるのではないか
  • それは個人の行動様式に左右される
  • 信用と信頼を使い分けている会社もある
  • 信用と信頼はの2つは違う、ということをまずは理解する
  • 人間的に信頼できるのか
  • 経営者としての手腕を信頼できるのか
  • どういう組織をつくりたいと経営層が考えているかによって変化する
  • メタフォア的な回答になるが、人間同士の組み合わせになるのではないか
  • ストレスチェックの結果を集団サマリーでみる意義はどこにあるのか

    江口尚博士
  • 集計したデータから一定の平均を出すことで、まずは見やすくなる
  • 全体をつかむには平均処理されたデータをみる
  • 平均値をベースに改善を行うのが医学的なセオリーなので必然的にこうした取り組みになる
  • 平均値は会社ごとにバラツキがある
  • 組織の中の人=個人が感じている仮説と集団サマリー結果は案外近いことが多い
  • 問題は「どうしてそうなっているのか」を質問しても回答がないこと
  • 結果から改善案を立案し、PDCAを安全衛生委員会で行うのが今のところはベター
  • 多くの会社の衛生委員会事務局は人事総務が関わっているので、組織改善につなげていけるかもしれない
  • ストレスチェックの結果をうけての個別対応はどうしたらいい

    小林慧智博士
  • 個別の状況と平均値データの2つがある
  • このデータを見ながら対応を考える
  • 対応については「そもそもどうして対応するのか」を定義しなきゃいけない
  • 分析と解析は違う
  • 解析は解釈を行うことなので、まず「価値観」がなきゃいけない
  • いい会社とはなんですか?という質問への回答はは個人によって違う
  • 自分たちにとっての「いい会社」「いい状態」をきちんと決めていかなきゃいけない
  • その上で、抜本的な改革なのか、対処療法的な改善なのかの選択とロードマップがある
  • 江口尚博士
  • 集計したデータから一定の平均を出すことで、まずは見やすくなる
  • 現場としては、産業医の先生の考えに左右されることがおおい
  • 現在の産業医の方の考え方のままでいいのかどうかという判断は会社の価値観
  • いずれにせよ健康と経営を繋いでいく時代になりつつある
  • そもそもの取組む意義や、個別対応を行うにあたってのポリシーといったものがないと対処療法どころか、場当たり的な対応になりそうですね。ポリシーがあるからこそ、今後の組織戦略をどうするのかということを思考する機会をつくることができそうです。

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    また江口博士の研究活動で調査票を配って社員の方に協力をお願いするプロセスがありますが、個別回答状況を提出することに拒否反応する社員が多い会社が案外多いとか。それは個人情報を提出することの損得を考えた結果、不利益をこうむるかもしれないと考えるからではないでしょうか。

    『自分の状況を上司に知られたくない』という気持ちが起きる理由は、知られることで不利益をこうもる可能性があるからです。こういう動機が起きてしまう企業文化であることが課題の1つかもしれません。

    採用の際に「どんな会社ですか?」「話しやすくフラットで風通しが良い会社です」というコピーをよく見かけますが、本当にそういう企業風土になっているのかを一度見なおしてみたいものです。

    また「個人情報保護の機能がきちんと運用されているかはとても重要」と江口尚博士は言います。例えば、産業医との面談で「会社には言わない」という前提があるのに、報告がいってしまう。そして報告をもとに人事部が本人に通知を出してしまうケース。こういうことが起きるようでは組織と個人の信頼関係が崩れてしまいます。そうなると、信頼関係をつくることが無理だということに成りかねません。
     
    組織への信頼感がない会社はストレスチェック義務化の話だけではなくて、顧客からの支持を得ることもできなくなりかねません。つまりそれが組織の価値観であるからです。結局は小林恵智博士が指摘する「トップが変わらなければ組織はかわらない」ということかもしれませんね。

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    戦略的に組織作りを考えているかによって、未来は大きく変化します。その視野に立ち経営トップに伝え、動かすことができる部門、その役割を担っているのが人事部門です。

    組織の未来を考えた時に「どんな組織にしたいでしょうか?」「10年後に果たしてあなたの組織は残っているのでしょうか?」最後にこんな問いかけが会場に対して行われました。

    今回、「企業と社員を取り巻くストレスを考えるシンポジウム」で行われた各セッションの内容をお伝えしました。ストレスチェック義務化をきっかけに「自社のストレスチェック体制はどうしようか」ということを各社が考え始めています。計画行動には思考行動様式や、各社の価値観の輪郭が見えてきます。
     
    今回のレポートが「組織と個人の最適な関係性はどうありたいのか」を考える際に少しでもヒントになれば嬉しく思います。