[レポート]経営に資する健康管理を考える

2014年9月5日(金)に東京・丸の内にて「健康人事委員会」による経営に資する健康管理を考える”セミナーを開催しました。

前田徹也
オープニングトークで、企業課題と人事関連部門の役割の変化について代表取締役の前田徹也からご挨拶をさせていただきました。

続いて、医療法人社団 平成医会 島田 潔理事長からご挨拶をいただきました。
島田 潔

基調講演:経営に資する健康管理

基調講演は、北里大学医学部公衆衛生学 助教で医学博士の江口尚先生による「経営に資する健康管理」というテーマで行われました。
“そもそも健康管理は経営に資するのか?”

この問いからスタートした基調講演は、冒頭でまず「企業としての健全性」と「働く人の健康」の関連性を「ソーシャル・キャピタル」という視点から丁寧に解説していただくことからスタートしました。

「社会関係資本」と言われる「ソーシャル・キャピタル」の視点では、職場でのつながりや、誰を知っているのか、ということが非常に大切だと言われます。だからこそ、近年の雇用形態の多様化、外国人労働者の増加、障害者雇用の推進など、働く人の多様性が拡大すればするほど、「意識的」に職場でのつながりをつくる取り組みが必要になってきます。運動会や社員旅行など昔ながらのイベントが見直されている背景には「ソーシャル・キャピタル」という考えがあったのです。

江口尚先生

セミナー参加者は人事・労務に関わる方々。

江口尚氏

参加者に語りかける江口先生の口調も次第に熱を帯びてきます。

多様化する職場において、良好な職場環境、企業風土を醸成する要因のひとつが「経営理念」だと考えられています。「経営理念の浸透」について事例を交えたお話の中で、「経営理念の浸透」こそが競争力の源のため、あえて経営理念を公開していない中小企業があるという例もあるそうです。これも他社には真似できない組織風土をつくる1つの考え方なのでしょう。

産業医など健康管理の専門職のスキル・知識等を取り入れて、健康的な組織風土(Healthy Climate)をつくりあげていくことは、真似しづらく、競争力の源となりうる。つまり“経営に資すると言えるのではないか”というお話に、参加者の方々が真剣な表情で頷く姿がとても印象的でした。

パネルディスカッション:産業医と労務のコラボレーションが企業組織を強くする

セミナー後半は、江口先生と社会保険労務士の宮嶋邦彦先生によるパネルディスカッション。宮嶋先生は宮嶋社会保険労務士事務所ならびに有限会社インスクエア代表取締役所長であり、健康人事委員会プロフェッショナルボードメンバーです。

前田徹也

司会進行は株式会社ワークスエンターテイメント代表取締役の前田徹也。前田からの様々な投げかけに対して、江口先生と宮嶋先生の回答がとても的確で分かりやすく和やかな雰囲気のなか進みました。エクソンモービルや京セラで産業医として実務に携わったご経験のある江口先生からは産業医をどう巻き込むべきか、安全・衛生委員会の運営について具体的な取り組み方をお話頂きました。

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宮嶋先生からは未来を見据えた労務管理について、ある裁判の事例を元にお話頂きました。5年先、10年先に世の中がどうなっているか見通した上で健全で健康な組織をつくっていくことがいかに企業にとって大切かということが分かります。

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中小企業コホート研究について

最後に、江口先生より“中小企業コホート研究”についてのご紹介がありました。コホート研究とは、一定期間追跡調査を行う研究のこと。

良好な組織風土を維持している中小企業の業績は、維持していない中小企業と比べて、良好である。
という仮説について、一時点の観測だと「業績が良好だから組織風土がよいのではないか」と(因果関係を明らかにしないままに)、結果論に終始してしまう可能性があることが懸念されます。
そこで解決策として、経年変化を追いかけることにより「健康に関連する指標と経営指標との関係性」を明らかにしていく取り組みが「中小企業コホート研究」です。

因果関係を把握することで、「意識的」に「企業としての健全性」と「働く人の健康」を推進することの意義を明らかにすることができるかもしれません。

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参加者の皆様は非常に熱心な方々ばかりでした。

セミナーを終えて

それぞれの組織が持つ(正解のない)課題に向かって相互に協力し合うと同時に知見をシェアしあう、組織の未来作りにむけて、こうした志を同じくする方々とのつながりも「ソーシャル・キャピタル」と表現できるのかもしれません。健康人事委員会では、このような互いに知見を共有し合えるコミュニティーを大切にし、みなさんと共に組織の未来を模索、チャレンジ、シェアできる機会をより多く作っていければと考えております。