レポート:徹底解剖!なぜサイバーエージェントの人事は強いのか?[20171004開催]

人の活躍がめざましい株式会社サイバーエージェントの源泉はどこにあるのか。2017年10月4日、同社社長室室長・膽畑様と、人材科学センター・向坂様をお招きして「徹底的に聞かせてください!」という企画をおこないました。どこにこだわりを持って、どんな思いでやっているのかという話や、人事の本質にある想いや苦労話を、とことん聞かせて頂き、参加者に沢山のヒントを頂く、あっという真の濃厚なイベントになりました。当日の一端をご紹介します!

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【登壇者情報】
徹底解剖!なぜサイバーエージェントの人事は強いのか?
(スピーカー)
膽畑 匡志氏 株式会社サイバーエージェント 社長室 室長
向坂 真弓氏株式会社サイバーエージェント 人材科学センター Analyst
前田徹也 株式会社ワークスエンターテイメント 代表取締役

(モデレーター)
堀尾司 CLUB-CHROプロデューサー/株式会社AllDeal 代表取締役CEO
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人事施策はネーミング・イメトレ・運用力を徹底

堀尾:お二人の現在の仕事について、教えていただけますか?

膽畑:はい。ぼくは、本籍が社長室長ですけど、兼務が多くて・・・・・・(笑)。人事システム、人材科学センター、カルチャー推進室、全社広報室と見ているんです。人事に携わったのはここ4年くらいですね。当初は代理店の事業部におり、その後、子会社社長を6年やっていました。

向坂:はじめまして、向坂です。わたしは今の仕事に就いたのは2016年からです。ずっと事業部で営業とマーケティングをしていたのですが、実は一度退職しているんです。5年間中国で暮らしていて、戻ってきたときに声をかけてもらって、そこから今の仕事ですね。「人事の中でデータ分析をしているのをやらないか」と言われ、おもしろそうだと思いました。

堀尾:向坂さんは、復帰組なんですよね。それに復帰後からの人事デビューというのも驚きです。お二人にお話を聞くのが、とっても楽しみです。根掘り葉掘り聞きますね!

膽畑:笑 はい、宜しくおねがします。

向坂:笑 はい、ほどほどにお願いします。笑

堀尾:それでは、まず一つ目にお聞きしたいのですが、サイバーエージェントの人事って強いなとか、特徴的だなと思うような話を教えてもらえないでしょうか?

膽畑:はい、まず何か人事施策を始めるとき、うちの会社が相当こだわっている点が3つあると思っています。これは他社と比べて圧倒的にやっているのではないでしょうか。

1つは「ネーミング」です。制度設計以上に時間をかけていることもあるかもしれない(笑)。100個案を出して、でも全部却下されて、もう一度100個つくった担当者も普通にいますね(会場笑)。

2つ目は「しらけのイメトレ」っていうのを徹底的にやります。何か施策を考えたときに「それを出すことで誰がしらけるのか」というのを必ず徹底的に洗い出していて。 たとえば女性活躍推進の制度を打ち出すとしたら、誰がしらけるかをまずシミュレーションします。同じ女性向けの施策でも既婚者と独身者とでは受け止め方が違う。男性がしらける場合もある。 良かれと思って打ち出した制度に対して、しらける社員は一定割合出てくるので、それを徹底的に洗い出すんです。

向坂: こういう反応が来るだろうという想定で、質問集のようなものを用意するんです。 「これはこう答えよう、ここにはこういう手を打とう、これは答えなくてもいい問い」という対応策まで全部決めて。そうすると予想外のことはほとんど起きないですよね。

膽畑:そして3つ目は運用ですね。結局いい制度を作っても、それだけでは絶対うまくいかないと思っています。運用って言ってもマニュアルではなくて「運用力」みたいな部分です。たとえば社員のコンディションをはかるのにGEPPOという月1回、社員向けアンケートシステムをおこなっているんですが、最初締め切りが来ても回収率が40%くらいだったんです。普通だと、どうしたらよいかを洗い出して来月の改善に反映するんじゃないでしょうか。でもぼくらは次回じゃなく今回だ、というのが先に来るんです

(会場から凄い!の声)

それで1週間延ばして未回答者にメールを送りました。自動配信メールをまだ導入していなかったので、1200人くらいに手で送りまして。「実施がまだですけれど返信いただけますか」とまず送り、翌日さらに未回収者の上司宛に「**さんが未回答なので言ってもらっていいですか」。さらにその翌日には未回答者の席まで行って「入力してもらってもいいですか」って(笑)。それで94%初回の回収をしました。

延ばしてそこまで徹底的に回収すると、社員の94%が「これ逃げられないやつだ」と思うみたいなんです(笑)。席まで来られちゃうんだなと。翌月からは速攻回収です。翌月は2週間で85%ぐらい回収しました。

堀尾:いやー、成る程。「やり切ること」はできそうで、でも本来の意味ではやり切れていないことも多いんじゃないかと、お話を聞くと気づかされますよね。事業サイドと同じ当たり前の意識が当たり前化されている。驚きました。何でここまでやれるんですか!?

膽畑:はい、 物事は絶対スマートにはいかないって思っているからでしょうか。 もちろん、できればやりたくないですよ。アンケート回収で1200通もメール送りたくないですもん。

(会場全員笑い)

考えて工夫してっていうわけではなく、本当は一番やりたくない“泥臭いこと”をやって仕上げにいく、っていうことが最後の際で大事になると思っていて。何の施策でも同じだと思っています。

たとえば以前に、社内で公募事業を募るコンテストがあったんですが、4年間はそれほど応募数は多くなかったみたいなんですよ。ところが4年目に担当が変わったときに一気に応募数が増えたんですね。何が変わったんだろうってよくよく調べたら、その担当者が公募時期になった時に社内を回って「事業プラン出してください」ってひたすら言いにいっていた。シンプルにそれだけだったんです。そこなんです。

(会場全員唸る)

見て育つ、任せられて育つ

堀尾:冒頭からの本質的な熱いお話、感動しました。ありがとうございます。そういうお二人は、ながく事業部経験もあるのですが、これまでのキャリアで転機となったことは何だったのですか?

向坂:はい、今の仕事につながるきっかけは入社して3年目のときですね。ずっと営業をやっていたのですが、あるときマーケティングの部署立ち上げに参加しないかと声がかかったんです。そこからマーケティング領域を勉強して。今の仕事もマーケティングに近いと思っています。この時、声をかけてくれた上司の影響も大きかったです。どの社員にも負けないくらいあらゆることを勉強していた人でしたね。この方には敵わないと何度も感じました。だからこそ尊敬もしていました。その背中を見て、わたしもこういう風にやらなきゃというのを学んだ気がしています。

堀尾:なるほど。とっても高いところに、当たり前の基準があがりますよね。上司の存在ってやっぱり大きくて、自然と教えていることはありますよね。向坂さんは、今、困ったことがあると、誰に相談するんですか??

向坂:上司である膽畑はその一人ですけれど、 専門的なことになると社内で同じことをやっている人がいるわけではないので、外に出るようにしています。 同じような仕事をされている方が他の会社にも増えてきているので、「うちのこと話すので、逆に教えてください」とか言って、情報交換しています。

堀尾:本当に社外のネットワークも広くお持ちですよね。実は、ぼくも何か調べたい事があれば、向坂さんに連絡していますしね。失敗談や経験談をネットワーク化するのは、とても重要だと日々感じます。それでは、次に膽畑さんの転機は、いかがでしたしょうか?

膽畑:はい、自分の成長の分岐点というと、お客さまですね。クライアントに育ててもらったなとか、教えていただいたなっていう感覚が多いです。ただそのチャンスをくれたり、自分の実力以上のミッションを任せてくれたりした人が周りにいたんでしょうね。 仕事を任せることで人は育つという考えが強い会社だと思っています。 

堀尾:顧客志向の意識が本質にあるんですね。人事であればお客様が、社員の方々にもなりうる。なるほど、何だか深く納得しました。

採用にかける情熱

堀尾:では次に、サイバーエージェントさんの強さの象徴でもある人材採用についてです。サイバーエージェントさんは人材採用に相当力を入れられていますよね。

膽畑:当社は採用にかける情熱が昔から相当高いですね。人事における一丁目一番地は、採用なので、そこが後を決めると思っています。

堀尾:膽畑さん名言が多い!(笑)確かに、面接官もそういう過程を経て入社してきているから、どういうふうに接せられたか、どんな情熱に触れたかという体験が皆さんありますよね。

膽畑:そうなんです。そして経営層が採用重視のメッセージをずっと出し続けているのもあります。採用は選抜チームが社内で選ばれて1年間活動するのですが、その人たちへのロイヤリティがまずあるんですね。経営陣からの激励もあるし、採用チームに入った人しかもらえないノベルティもありますし。

堀尾:採用にかける情熱が並々でないというエピソードは尽きなくあるでしょうね。一方、人がどんどん増える中で、組織文化そのものは変化せざる得ない気がするのですが、いかがでしょうか。

膽畑:はい、基本的には採用人材像はずっと一貫していると思うのですが、2012年頃から技術者を大量採用始めた時期があります。そうすると文化も変わっていきますね。たとえば出社時間が9時から10時に変わったり、組織文化そのものを技術に寄せる方向のメッセージが経営から出されたこともあります。基本の組織文化は変わらないのですが、働く人の環境づくりもふくめて変化し続けています。

堀尾:なるほど。たとえば他にはグループ全体での共通項と、子会社間での違いもまたありますよね。以前に子会社の経営会議を取材しているという話を伺ったのですが、その取り組みを教えてもらえますか?とても印象的で感動したんです。

膽畑:そうですね、確かに重要な施策でしたね。今、カルチャー推進室というウェブの社内報をつくっている部署も管轄しているんです。カルチャーって使われて初めてカルチャーとなると思っているので「使われること」を推進活動の目標にしています。「使われる」ということは「真似もできる」と思っていて、その材料の一個に「突撃、隣の役員会」っていう社内報コンテンツをつくってみました。

役員会って何を話しているか分かんないですよね(笑)。しかも当社は新卒が社長になったり会社をつくったりすることもあるので、いざ役員会となった時に、何をしていいかわからない場合もあると思いまして。成果を出している子会社の役員会ではどんなことを話しているのか知ることができたら面白いし、真似する材料になるかなと思って・・・・・・

(会場唸る)

堀尾:何度聞いても、この施策は興味深い。経営人材育成の施策として、とっても面白いですね。

膽畑:わたしが「突撃、隣の役員会」と書いたでっかい“しゃもじ”を持って子会社の役員会に参加するんです(笑)。それで発言をメモして、終了後に社長にインタビューをして。役員会の様子と合わせて記事にします。
 いろんな会社に波及したらいいなと思って始めたのですが、意外だったのはその会社の社員のモチベーションがあがったことです。役員会で、こんなに自社組織や人のことについて話していると知ったという声を聞きまして、なるほどと思いました。 

堀尾:それは、凄い!

膽畑:はい、もちろん会社によって違いはあって、雑談で始まる会社とか、意思決定より情報共有中心の会社とか、個性がでますね。全体の役員会のうち、どのぐらいの時間をどんな議案に時間を費やしているのか、という話は載せちゃいますけど(笑)。このやり方がいいっていうよりは、この会社ではこうしている、この会社ではこうしているっていうケーススタディをたくさん並べて、あとは自分で使えるものを真似してくれたらと思ってつくっています。自分自身も子会社の社長を6年やっていたので、苦しい局面とかもわかるし共感できる部分があるから、社長へのインタビューもお互いいい気づきがありますね。

経営に資する人事

堀尾:次は、向坂さんにお聞きします。向坂さんの人材科学センターでは、経営へのレポートも定期的に作っているかと思うのですが、たとえばどんなテーマを扱っているのでしょうか?

向坂:はい。レポートをつくって経営陣に定期的に出しているまして、たとえばチームのコンディションについてGEPPOであがってきた数値をもとに集計や分析することがあります。「晴れ」とか「曇り」とか天気で表していきますが、その天気もいろんな理由で変わるんですね。結局は成果には連動して変わる率が高いのですが、回答している本人たちは無意識にその変化を回答していることも多いです。

堀尾:なるほど、そのように可視化させると解りやすいですね。

向坂:そうなんです。あとは、人ごとに見ているものもあって、特に新卒の人たちは、最初の半年間かなり詳しく見ています。新卒と、新卒のトレーナーから出てくる毎月のGEPPOを使い、本人とトレーナーの評価のギャップなどを見ています。

レポートは全部役員会にも提出していますね。 ギャップがある場合には何かしら問題が発見されるので、問題起こってないか、みんなちゃんと走れているかっていうチェックに使えているのかなと思います。 特に本人が「快晴」って言っているのにトレーナーは「雨」と言ったり、その逆となったりすることもあって、こういうのは要チェックです。

堀尾:役員会に提出しているんですね。役員同士で人事に纏わる議論をしやすい文化創りになっていますね。

向坂:そこは、積極的に役員会に提供するよう努力したいんです。

堀尾:なるほど。サイバーエージェントさんが、に対する想いを風土や文化にされていく仕掛けの一部が見えました。さて、次は、お二人が目指している人事像を教えてください。

向坂:わたしはやっている仕事が特殊なので人事というのかわかりませんが、 経営に対して人と組織の観点で何か提言する立場にいられたらと思っています。 「このレポートいいね」と経営が言ってくれるものは出していきたいですね。

堀尾:なるほど。経営陣の人にまつわる情報支援になりますし、人に関する共通言語が生まれる仕掛けになりますね。

膽畑:以前、上司に「最高の人事って何ですか」と聞いたときに「業績を上げる人事が最高の人事だよね」と言われたのが残っていて、そこから事業をやるのと人事をやるのは同じだという感覚を持っています。その点で、経営に人事の情報をどれだけ持っていけるかというのも重要だと思っていて、求められていなくてもこちらから「見てください」とレポートを提出することもありますね。

堀尾:おっしゃるとおり 業績につなげて逆算する思考は、とっても重要ですよね。 お二人の良いチームワークにより、人事を多面的に見る機能の重要性や素晴らしさが理解できました。前田さん、お二人のお話を聞いた感想を是非教えてください。

前田:はい、今日は、会場にいる皆さんもそうだと思うのですが、汗をかきながらつくっていらっしゃる話を聞いて、やはり他人ゴトではなく自分ゴトとして常にとらえ、その情報を経営にしっかり出していくというのが、成功していく人事の共通項のように感じています。とても感動しました。本日は、お忙しいなか誠にありがとうございます。

堀尾:今日は日々の具体的な動き方から意識されていることまで、うかがうことができた貴重な機会でした。ぜひ次回はもっと深いお話をしたいです。次回もよろしくお願いいたします。今日は、どうもありがとうございました。

膽畑:こちらこそ貴重な機会、ありがとうございました。次回は向坂特集でいきましょう(笑)

向坂:はい(笑)今日は、誠にありがとうございました。。次回も宜しくお願いいたします(笑)

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