人事制度改革=はたらき方改革を進めることが組織に及ぼす影響を理解するための事例勉強会を開催しました

こんにちは、健康人事委員会の堀尾です。7月7日(木)、七夕の日に弊社会議室(東京都文京区)で開催した健康人事委員会メンバーズの事例勉強会レポートをお送りいたします。今回は2部構成で、健康人事テーマを多角的に考える機会となりました。

活用できる様々な制度

第1部では東京都労働相談情報センターの唐川美由紀様に、働き方改革と東京都のサポート体制について詳しくお話しいただきました。社員がいきいきと働ける環境づくりを進めたいけれど、なかなか新しい取り組みをはじめられない、何から手をつけていいかわからない、というような企業も多いのではないでしょうか。
 
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東京都の労働相談情報センターは、施策づくりや労務トラブル防止など、様々な労働相談を受けている組織です。働き方改革を進めたい企業にとって、非常に活用しやすい支援制度ができているのをご存知でしょうか。それが、今年から始まった「TOKYO働き方改革宣言企業」という取り組みです。

長時間労働の削減及び年次有給休暇等の取得促進などをテーマに、2~3年後の目標と取組内容を宣言書に定めるもので、宣言書は東京都ホームページで公表されます。

宣言書として明示することで従業員や自社のステークホルダー、就職活動を進める学生からも、働く環境づくりに対して意識の高い企業だという印象をもってもらうことができます。はたらく環境の改善に関する政策がここ数年目立ち始めていますが、実際に環境改善に取り組むことは社会の変化をリードすることにもなり、取組企業数がふえることは、社会的機運をつくることにもなります。また「TOKYO働き方改革宣言企業」に取り組むことには別の利点もあります。働き方改革宣言をした内容を実践していく際に、都の助成金が活用できるのです。

たとえば長時間労働の削減を進めるための問題点抽出と分析、取り組み内容の設定や社内周知を進める部分に対して30万円の助成金、働き方の改善や休み方の改善を進めるための制度整備をする際に各10万円の奨励金や助成金などが申請により活用できるのだとか。ほかに、社会保険労務士や中小企業診断士などの専門家の方を無料派遣するという制度も設置されています。

宣言書に記載すること
  • 働き方改革宣言文
  • 「働き方の改善」「休み方の改善」に関する目標 (取り組み期間は2年以上3年以下)
  • 目標達成のために行う具体的な取り組み内容

唐川さんが強調されていたのは、まずは意識を高め、機運をつくっていくことを考えているということ。そのため東京都では実績は問わず、これからの宣言をすることで助成金活用までできる仕組みとしているのだとか。働き方改革の中には、仕事と育児の両立や介護支援非正規労働者雇用なども含まれています。毎月エントリー機会があり、年間で約1000社に活用してもらえるような制度です。
 
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説明後の質問・意見交換では「活用できそう」「もっといろんな会社に知ってもらうことができるのでは」という話で盛り上がりました。4月から始まったこの制度。現在の活用状況としては毎月140~150件のエントリーが来ているそうです。もっと多くの企業がこうしたテーマに感度を高め、取り組みを開始されるように、健康人事委員会でも継続して活用状況などに注目していきたいと思っています。

健康人事テーマへの様々な切り口

第2部の冒頭は、今日の参加者同士、改めて自己紹介と本テーマへの関心ポイントを共有しました。

初期から参加している宮嶋さんは、社会保険労務士としてのお仕事柄、本テーマへは幅広く知見をお持ちです。大きなトレンドとして、労務トラブルや“ブラック企業”問題といった対処型のテーマから、採用や定着、その先の人が活躍できる状況づくりという積極型のテーマが増えてきているという話を提供いただきました。

人事コンサルタントの大竹さんからは、組織風土やコーチングによる支援のほか、ストレスチェックなども導入されている近年に重要性を増している衛生委員会の活性化というテーマについても、コメントをいただきました。

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事業企画支援などを手掛けている瀧田さんは、石川県を拠点に活動されています。地元企業の方々にとって、健康人事がまだ注目テーマにはなっておらず、全国で「働きやすい会社」に対する意識を高めていくことの観点で、コメントを頂きました。

介護領域で活動をする高橋さんは、最近「親ブック」という親とコミュニケーションをとるツールを開発・発信されています。子育てと介護のダブルケアという話もありますが、この委員会活動も含め、情報共有、環境整備、サポート体制をもっと広げていけたらという話にも広がりました。

はたらきやすい職場環境を整えていくことで、社員一人ひとりが安全に、安心して元気で健康に働くことができます。社員は組織の礎、基盤です。視野を広げていけば一人ひとりの家族の状況も含まれてくるのではないでしょうか。つまり、衛生要因が整っているからこそ社員は労働生産性向上、企業価値向上を推進することができる、というサイクルがうまれるのではないでしょうか。

今回のように参加者同士の専門知識が交換されることによって、互いの知識を吸収し、知恵を活かして、さまざまな人事制度をどう戦略的に取組んでいくべきか、といった思考がうまれます。もっともっとこの輪を広げていけたら社会に対しても、「はたらきやすい職場環境をつくる」という好循環がどんどん広がるのではないか、と感じました。
 

事例研究~働く人に対する一貫したポリシーの重要性

第2部のメインは、株式会社レッグス、管理部長の村田様から頂いた資料を共有しました「戦略的人事部門の果たす役割とその具体的な取り組み」についてお話いただくご予定でしたが、急遽ご都合がつかなくなったため、ご提供いただいた資料をもとに、全員によるディスカッションとなりました。

株式会社レッグスはこの1年の間にJASDAQから東証2部、1部と上場市場の変更を経験しています。経営環境の変化にともない「個人と会社の目標を一致させる、社会に協調、社会に貢献」という理念をコアに、その実現をめざして組織戦略を明確化されてきました。

100年後も続く会社、次の世代へ受け継がれる会社にしていくために、「自己成長できる人間をつくる、成長できる環境をつくる」という企業文化形成が、社内では常に議論されているそうです。法令順守とともに、組織を固め、理念を軸にさまざまな施策を展開するプロセスは、多くの会社の参考になるでしょう。

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現在重視しているのは、

  1. 規律の文化
  2. 実行の文化
  3. マイクロマネジメントの文化

という3つの文化です。特に3つ目のマイクロマネジメントの文化では、部下のプロセスをしっかり見ることを求めています。投げっぱなしにしない、しっかり責任を共有していく。そのため、社内のミーティングスペースは常に満席状態だそうです。

こうした文化の土台となる人づくりは、同じ「バスに乗る」部分の見極め、すなわち採用戦略の明確化です。あるべき人材像は10か条として明文化されています。入社後は、「バスに乗り続け」たくなるためのスキルアップ・育成支援や、処遇・報酬制度が整えられています。

社内講師ですべて構成されているLEGS Universityは全社の知恵が集約された場ともなっています。そして同時にバスに乗り続けるために全社で健康をケアする「健康人事」部分がしっかりと土台に置かれているそうです。

「健康人事」をマネジメントする

メンバーの宮嶋さんより一般的な課題や事例からの学びについてのコメントをいただきながら、その後の意見交換が進みました。

一般的な課題
  • 耐性力が少ない社員の増加
  • 好きなことをやれたら時間は気にしない社員にとっての過重労働
  • 時間管理を気にする社員にとっての過重労働
  • 企業規模が大きくなったときに見えなくなる個別問題
  • 人事施策起案者の想いが届けられる規模
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    事例からの学び
  • 耐性力が少ない社員の増加
  • レッグス様のマイクロマネジメントは、一人ひとりの考え方や耐性力の違いがあっても、それを個別にケアしていく一つの仕組みである
  • 組織規模が大きくなっても、重視すべきポリシーや、共通の判断軸を持っていれば対応できる
  • できるだけ見える化、仕組化することが、強い組織基盤となる
  • 健康人事を進めるマネジメントは組織風土と大きな関わりがあります。何か問題が起こりそうな芽を現場で見極められること、判断に迷っても誰に聞いたらよいかがわかっていること、問題情報は一気通貫して共有されていること、などがある組織かどうかは持続性・発展性に影響します。

    労務トラブルが起きる前段階でフォローすることができる仕組みの工夫は、マイクロマネジメントに一つのヒントがあります。またトラブルの芽がそこにあると気づける組織風土であるかどうかは、理念の共有や組織戦略の働きかけでつくられていくでしょう。

    今回のポイント

    第1部では東京都が推進している制度を知り「はたらき方改革」に対する行政の積極的な姿勢を知りました。第2部では人に対する一貫したポリシーを持ち、それが組織風土になっている会社の強みを学びました。
     
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    健康人事を進めるポイントとしては次の3つの示唆があります。

  • 「働き方改革宣言」などの機会を活用し、自社の改善ポイントの棚卸をする
  • -奨励金・助成金を活用すると改善を進めやすくなる

  • 自社の人材ポリシーを明確化する
  • -組織の持続・発展の根幹に必要な部分

  • 見える化や仕組化を工夫して、組織風土をつくる
  • -共通言語、共通判断軸づくり

    今後も、よりよく働くための組織づくりに関する事例や専門家知見などを紹介していく予定です。また本レポートでご紹介した各制度の取組について、ご関心がある方からのご連絡をおまちしております。
     

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