人が育つ『コミュニケーション戦略と仕組み』のつくり方(セミナーレポート)

こんにちは。健康人事委員会の堀尾です。7月21日(木)に「人が育つ『コミュニケーション戦略と仕組み』のつくり方」と題した、健康人事委員会メンバーズの定例勉強会を弊社社会議室(東京都文京区)で、開催いたしました。当日のレポートをお送りいたします。

今回は健康人事委員会プロフェッショナルボードメンバーでもある、FFS理論を提唱する株式会社ヒューマンロジック研究所の古野俊幸氏が登壇。OJT教育をはじめとしたコミュニケーションが中心となる人材育成に重要となる関係性について、FFS理論(※Five factor and Stressの略称)の視点から考察できる点をご紹介をいただきながら、参加メンバーとの活発な意見交換をいたしました。

 健康人事委員会プロフェッショナルボードメンバー古野俊幸氏

あなたの会社は新入社員に対して、どのような育成をされていますか。導入研修以外には、現場でのOJT(On the Job Training)教育を入れている会社は多いのではないでしょうか。

そのOJTを機能させるために

OJTの現状はどのようになっているのでしょうか。
産業能率大学総合研究所の調べによると、初期教育でOJTを活用している組織は86.9%にのぼるものの、OJTが機能していると回答したのは12.6%にとどまっています。OJT担当者への教育を実施している率も43.7%。うち8割以上は「役割や心構えに関すること」の内容にとどまり、具体的な教え方を伝えきれていないという調査結果があります。

そもそもOJTとはなんでしょうか。OJTとは仕事を通じて教育をすること。教える内容は次の5つに分類されます。

  • 知識・情報教育
  • 技術・技能教育
  • 日常態度の教育
  • モラル(士気)教育
  • 創造性教育

特に[創造性教育]、つまり自分で考え自分で動ける、創造的な人間をつくっていくという点は、本人の個性も重要ですが、より重要なのは“教える側の人間性”が大きな意味を持ってくるということです。「え?どういうこと?」を理解するためには、まず育成担当者の個性と新入社員の個性は異なっている、ということを理解する必要があります。育成の際には、主体性・自律性を目指して、自ら学ぶ環境を設定できるようになるかがポイントになる、と古野氏より指摘がありました。
 
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たとえば拡散性(外にむく力)が強い人と、保全性(守りに向く力)が強い人では、学び方のスタイルがまったく異なります。たとえば拡散性が強い人は、まず経験をすることを好みますが、保全性が強い人は先にしっかり計画立てをすることを好みます。

学び方や教え方をまなぶ機会は一般的には多くありません。そのため育成担当になった際、多くの人は自分流で教えることになります。すると自分の得意とする学び方を前提として教えていくことになるのです。
 
つまり“教える側の人間性”によって教え方が変わる、ということです。

適切な組み合わせを考えるための、個人の特性理解

育成担当者と、新入社員の個性が合う・合わないで、新入社員(教えられる側)の理解や、モチベーションにも影響がでてきます。教え方がいい・悪いではなく、そもそもの個性が合わないと、反発しあう可能性があるからです。その一方、自分と異なる個性タイプにあわせた指導法を習得することができたなら、育成担当者にとってもキャリアの幅が広がることになります。

ここで、自分や相手の個性を知るツールとしてのFFS理論を、改めて紹介いただきました。

個性を見ぬくためのFFS理論

FFS理論は組織最適化のための理論で、組織の生産性を上げるために研究されてきました。モントリオール大学国際ストレス研究所で「ストレスと性格」を研究していた小林恵智博士が提唱した理論体系です。
 理論の基本マトリクスには5つの因子があり、個性によりその強弱が変わります。

因子 簡易な説明
A 凝縮性 自らを固定・強化しようとする力の源泉となる因子
B 受容性 自らの外部の状況を受け入れようとする力の源泉となる因子
C 弁別性 自らの内部・外部の状況を相反分別しようとする力の源泉となる因子
D 拡散性 自らを拡張・発展させようとする力の源泉となる因子
E 保全性 自らを保全・維持しようとする力の源泉となる因子

 
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 参加メンバーのなかに、以前FFS理論のセミナーを受けた方がいらっしゃいました。お話をおききしたところ、「最悪の組み合わせ」チームでワークをしたときにはなかなか前に進まなかったものが、補完しあう組み合わせで構成されたチームでのワークの時には、勝手に役割が分担され、アウトプットが生み出されることを体感されたそうです。

この体験談をきっかけに、関係性次第で生産性やモチベーションに大きな影響が出る、シナジーが生まれるかどうかの違いが出る、という意見交換が進みました。個性の違いは、それぞれの学び方の違いにもなります。では本日のテーマでもある育成担当者と新入社員との関係性はどのように考えたらよいのでしょうか。

短期的成果をだすための個性の組み合わせ

実はOJT教育のような場合の組み合わせは、同質性の人を組み合わせる方が、効果が出るのだそうです。その組み合わせ方にも工夫があります。当日紹介された内容をすこしご紹介いたします。
 

拡散性と拡散性の組み合わせ
「あんな人になりたい」と思って新入社員が伸びていくので、スキル差が大きい「メンター」的な存在を先輩社員につけると、成長度が高まります。
保全性と保全性の組み合わせ
「早く近づきたい」と思って新入社員はがんばるので、細かく教える「トレーナー」的な存在で、経験やスキルが身近な方が好ましいです。
拡散性の先輩と保全性の新人
先輩は自由にやらせますが、新人にとっては「何も教えてくれない」と不安になりがちですので、そのギャップがあることに注意が必要です。
保全性の先輩と拡散性の新人
先輩は細かく教えますが、新人にとっては「まわりくどい」ととらえがちです。そのギャップがあることに注意が必要です。

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また常に同質性の人と組むのではなく、たとえば2年目にはメンター以外に、真逆の人をアドバイザーとしてつけてみる、といったことも効果を高めるのに役立つそうです。その結果、教えられる側は今とは違うやり方を知ることができ、思考の幅を広げることができることに繋がるのだそうです。

人が育つコミュニケーション戦略を進める事例

ここまで全体の講義をして頂いたあと、様々な工夫をしている事例を伺いました。

 ある会社では、育成責任者と新入社員だけではなくメンバー全員の特性をとり、管理職の気づきに使っています。目的はチームで高いアウトプットを出すこと。そのため個人の思考、行動特性データをオープンにすることで、メンバー個々の特性を活かした働きかけできるような取り組みを行っているそうです。

たとえば管理職研修でオープンデータの活用を議論した際のこと。ある課長は年上の部下で専門性の高いAさんを部下に持っていました。Aさんの経験値を信頼して、指示を出すことは少なくしていたそうなのです。
しかしAさんは「受容性」が高い個性をもっていました。つまりAさんにとっては“放置されている”というストレスを感じるような状態になっていたのです。
Aさんの個性を知った課長は、一転して、こまめなコミュニケーションをとるようにマネジメントスタイルを変化させたそうで、結果、パフォーマンスがあがったそうです。

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 また別の組織でのこと。その組織はプロジェクトチームに入ってくる新メンバーをなかなか受け入れづらい風土がありました。そこで事前に、

  • どのような特性の人が入ってくるか
  • その人が加わることで、メンバー構成がどのように進化するか
  • をFFS理論によるデータを事前に共有し、変化予測も共有するようにしたところ、非常にスムーズに新メンバーを受け入れることができはじめたのだそうです。
     
    こうした事例から、次のような理解が深まりました。

     実は、同質性の高い仲良しチームであるだけでは、高いアウトプットにはつながりづらくなります。どのようなチームにしたいかの理想像を掲げたうえで、どういった人材を組み合わせて組織をつくっていくのかを検討するための要素として、個別的特性の把握は有効といえるのではないでしょうか。

    参加メンバーにもFFS理論を導入した会社の方がいらっしゃいました。今年はFFS理論をもとに、ブラザーシスター制度を導入。先輩社員と新入社員の組み合わせをつくり、OJT教育を強化したそうです。さらに、月に1回、人事がブラザー側・新入社員側の双方に面談をすることで、任せきりにしないOJTを進めているそうです。

    メンバーの思考行動特性をオープンにして、育成やチームづくりに役立てていくことは、一人ひとりの力の発揮度向上にも、組織力の向上にもつながりそうですね。まさにテーマである「人が育つ『コミュニケーション戦略と仕組み』」について、深く理解しながら各社の課題を話し合った回となりました。

    本日のセミナーのポイント

    本日のセミナーでお伝えさせていただいたポイントは次の5つです。

      
    OJTやチームづくりという、どの組織にも共通する身近なテーマこそ、おろそかにしてはいけないことを改めて感じました。身近な組織課題を考える際の参考情報を、今後もセミナーではとりあえげていきたいと思います。

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