セミナーレポート:明日からできるコミュニケーション術

こんにちは。健康人事委員会事務局です。今月の定例セミナーは「明日からできるコミュニケーション術~組織戦略が会社を変える」をテーマに、10月27日(木)に弊社会議室(東京都文京区)で開催しました。

本テーマは、前回に続きFFS理論を提唱する株式会社ヒューマンロジック研究所の古野俊幸氏に登壇いただきました。健康人事委員会プロフェッショナルボードメンバーとして日頃お世話になっています。

株式会社ヒューマンロジック研究所 古野俊幸氏

今回は参加者の方に事前にFFS理論による個性診断をうけていただきました。その結果も見ながら、職場における関係性構築について、理解や議論を深めることができたたセミナーとなりました。

 icon-asterisk 今回の定例セミナーでは、「明日からできるコミュニケーション術~組織戦略が会社を変える」として、FFS理論の活用方法を参加者全員のデータとみながら、組織でどのように活用できるのか、を学びました。

職場で必要な“コミュニケーション”の定義きまっていますか?

冒頭は「コミュニケーションって何だと思いますか」という問いから開始。誰もが薄々イメージは持っているはずですが、いざ問われると言葉に詰まってしまう人も多いのではないでしょうか。特に職場においては、日常会話がはずめばよいというものでもありません。

参加メンバーからは、「何ができているか、できていないかの確認を常にコミュニケーション時には心掛けている」という声や、「会社組織においては、業務遂行に向けた情報伝達が大事」という意見が出されました。やはり会社組織においては、目的目標を達成するための必要な情報のやりとりが“コミュニケーション”の要素になってきます。それができているかと問われると、課題があると答える職場の方がおそらく多いでしょう。

FFS理論は、コミュニケーションを「関係性」から見ていきます。「関係性が悪い」ということは、本来のコミュニケーションが取りづらい状況ということ。相手の特性を理解して少し関わり方を変えるだけで、コミュニケーションが変わっていくのです。

明日からできるコミュニケーション術セミナー風景

人間関係を3つに分類してみます

人間関係の基本パターンは3つだけです。

  • 自分と似ている関係
  • 自分と似ていない関係
  • 自分と似ていないけれど補える関係

自分と似ている人と一緒にすごしている関係が一番居心地がよい気がしますね。しかし、自分と似ていない人、違うタイプの人がいたからこそ助かる!ということもあるでしょう。組織においては皆が同じことばかりを考えていては、発展性に乏しくなりがちかもしれません。

一方、似ていない関係同士の場合、自分にとってはで良かれと思うことが、相手にとってはストレスになってしまうこともあります。

古野氏からは関係性が組織の生産性に及ぼす影響について比較実験をした事例を紹介いただきました。この実験は1979年から1983年に国際戦略研究所がコンピュータ・プログラミング作業での総生産性を比較実験したものです。

実験結果によると、8人で作業をした時に、自分と似ている、つまり同質編成集団だと10人ほどの生産性が発揮されました。無作為につくられ補完しあわない集団だと6人分しか発揮しませんでした。一方、自分と似ていないけれど補える、異質だけれども補完しあう関係性を持つ集団は、12人分の生産性が発揮されたそうです。

補完しあうチーム編成がいかに影響力を持つかということがうかがえますね。

組織がもっとも力を発揮する最適な組織編成とは

組織のポテンシャルを最大に発揮させたい、ベストなチームを作りたい、と考える経営者は多くいます。自社のビジネスにとって最適な組織をつくるためには、まず組織を構成するメンバー各自の個別的特性(個性)を把握することをおすすめします。

個性を把握することで、誰と誰の組み合わせが同質なのか、あるいは異質なのか。はたまた3人以上になったときには、どういう気質をもったチームになるのか、を判断することができます。この個性を把握するために、米国国防機関の依頼で組織生産性を上げるために研究されたというFFS理論が参考になります。

事前にうけていただいた個性診断の結果データを見ながら、組織内での使い方をイメージしてもらいつつ説明を聞きました。個人診断シートが返却されると、そこに5つの因子のうちどれが高いかのグラフが記されています。絶対値の大きさではなく強弱のバランスが個々人の特性を表します。

FFS理論による自分の個性診断レポートをみるセミナー参加者

FFS理論の5つの基本因子

FFS理論では人が恣意的、無意識的に考え、行動するパターンを5つの因子でまずわけています。

5つの基本因子
A 凝縮性…自らを固定・強化しようとする力の源泉となる因子
B 受容性…自らの外部の状況を受け入れようとする力の源泉となる因子
C 弁別性…自らの内部・外部の状況を相反分別しようとする力の源泉となる因子
D 拡散性…自らを拡張・発展させようとする力の源泉となる因子
E 保全性…自らを保全・維持しようとする力の源泉となる因子

5つの因子は、絶対値の大きさではなく強弱のバランスがで個人の特性を表しています。強く出ている因子ごとに特性的な行動がみられます。たとえばBの受容性が高い人は相手が喜ぶことがうれしく、頼まれると断れない気質です。半面、受け入れ過ぎてオーバーキャパになってしまったり、相手に否定されると自虐的になってしまったりすることがあります。

Dの拡散性が強い人は、自ら積極的に動いて解決をしていくことを好みます。逆に、その行動に制限がかかると、反発して破壊的、攻撃的になってしまうこともあります。個人のあつまりが組織ですから、組織にも特性があります。

その特性によって、課題を把握しやすくすることもできるのです。

個性の集合体が組織の特性になる

たとえばあるサービス系の会社でのはなしです。この会社は新卒採用者の離職が多いことに悩んでいました。離職者の多くはBの受容性因子が高いタイプ。言ってみれば、まだ一人前の仕事をするにはまだまだ時間がかかるのに、お客様から言われたことにはできるだけ応えたい、とすべて受けてしまうタイプです。

しかし会社の方針で残業はできません。うけた仕事を進めていくには時間がありません。こうして要望に応えきれないことを、人一倍重荷に感じてしまうケースがおおくあったのでしょうう。「ストレス」という外的刺激をうけた受容性の因子は、ネガティブに働くと逃避的な行動が出てしまいます。

まさにそうした特性が働いて離職方向に向いてしまった面もうかがえます。特性がわかっていると、上司や周囲ももう少し踏み込んだ働きかけができたのかもしれません。

組織内のコミュニケーションに、FFS理論を活用する

FFS理論の活用方法にはさまざまなケースがあります。ある会社では、課長が部下の特性を知ってマネジメントに活用できるようにFFS理論を導入しています。課長は事前に部下の特性データも見たうえで、面談で相互にシートを見せ合いながら話すことを推奨しているそうです。

 「あなたはEの特性が強かったんですね。私がDタイプなので、あまり説明せずに指示だけをしてしまっていたので、確認したい点が出てきてしまうんですね」 「そうなんです。私どうしても細かいところまで確認しないと不安になってしまうたちなんですよ」

相互のギャップを上司から言いだすと、部下も自分の思考を上司に伝えやすくなります。とてもシンプルな例ですが、『相手がどういう思考行動をするか』を知っておくことで、日常のギャップを埋めることができます。

セミナー風景

上司部下の一対一の関係だけではなく、チーム全体の特性を可視化してみるのもよいかもしれません。会議で意見がかみ合わないときも、発言者の特性に応じた補足をするだけで、建設的な議論に向かう場合もあります。たとえばAの因子が強い人が会議をリードすると、「あるべき論」「すべき論」が多くなるかもしれません。すると「もっと異なる意見に柔軟に対応してほしいのに」という不満が出てきます。たとえば「一通り可能性をホワイトボードに書いてから、あるべき姿を議論しましょう」と段階を踏むことで、相互を近づけられるかもしれません。

ストレスすべてがネガティブ、つまり害を持つわけではありません。適度なストレス(刺激)はポジティブな影響を与えるそうです。違いを是として、違いから新しさを生み出せるのが様々な人が集うこと、人と人、人と仕事の組み合わせで結果が大きく異なるということが、組織の面白さですね。

FFS理論を企業以外で活用している事例

参加者からのご質問で、「FFS理論を企業以外で活用しているのはあるか」という話に最後は及びました。ある個別指導塾で使っている事例があるそうです。ただし診断を使うのは中学生以上で、小学生以下は観察法でとっていくとのこと。この塾では自転車の置き方やスリッパの置き方、休憩時間の使い方などで特性を把握します。

子どもの学習方法は拡散性か保全性のいずれかに大別されるそうですが、その違いによりテキストや教え方を変えています。結果的に学習する内容は同じなのですが、保全性の強い子は体系立てたアプローチ、拡散性の強い子は自ら勉強の順を選択するアプローチと変えるそうです。確かに子どもの勉強方法も、特性を活かしたやり方の方が伸びるだろうなと合点がいきます。

明日からできるコミュニケーション術セミナーの風景

本日のセミナーのポイント

本日のセミナーでお伝えさせていただいたポイントは次の3つです。

  • コミュニケーションは「関係性」を知ることで向上できる
  • 補完し合うチーム編成は生産性にも影響する
  • 職場内で特性を可視化することは、建設的なコミュニケーションに役立つ

5つの因子の説明を聞くたびに、周囲の人の言動で思い当たるシーンが目に浮かびますが、自分自身も無意識に強い因子に準じた言動をしているのでしょう。組織編成に特性の違いという発想を持ち込むことに、改めて気づいた回となりました。