伸びる会社になるために:セミナーレポート

 icon-asterisk 今回の定例セミナーでは、FFS理論による分析結果をもちいたチームビルディングの事例から、「伸びる会社」の特長をひも解くために、さまざまな事例をお話しいただきました。

こんにちは。健康人事委員会事務局です。今月の定例セミナーは9月29日(木)に、「伸びる会社のコミュニケーション戦略」という内容で弊社会議室(東京都文京区)にて開催しました。

セミナーでご案内したFFS理論はこれまでも紹介いたしましたように、「ストレスと性格」の研究において開発されたものです。人の行動パターンを5つの因子で計量し、その人が保有している潜在的な強みを分析します。この分析結果にもとづくチームビルディング支援をされている株式会社ヒューマンロジック研究所の古野俊幸氏より、本日のテーマ「伸びる会社」について、様々な事例をお話しいただきました。

株式会社ヒューマンロジック研究所:古野俊幸氏

「伸びる会社」には、どんな特徴があるのか

 一番のポイントは、組織は大上段から一気に変えられるものではない、という理解かもしれません。小さなことの積み重ねが大きな差になっていくという大前提です。

たとえばある研究所では、組織風土に問題を感じたマネジャーが、自分のチームを検証したい、とFFS理論を導入しました。問題を感じていた部分に対し自分なりに考えてチーム編成を変えてみたものの、その編成はどうなのだろうか、という疑問を検証し、改善すべき点があれば、FFS理論に基づきいた改善を実施していくが狙いでした。

FFS理論による分析結果をもとに、チーム編成をみなおしたところ、成果がみえだしました。すると、同じように組織風土の問題を感じていた別部門の部長が、その成果に関心を持ちました。その部門は、全社で実施した従業員満足度調査で低い数値が出続けているとのこと。しかし原因までは分からないままに、時間だけが過ぎている状況でした。

まず特に数値が悪い部署でFFS理論を使ってみたところ、その原因が見えてきました。
 その部署は、外部の協力会社との折衝や本社からの指示も多く、かつ中長期視点をもった意思決定が必要なところです。しかし意思決定の核となるマネジャーが、「いい人だけれども、シビアな意思決定ができない」タイプであったために、的確な意思決定になっておらず、部下にも不満がたまっていた状態でした。

 FFS理論から導かれた反応特性と現在おかれている状況のギャップを埋めるべく、業務フローにより意思決定者を分散させる組織体制にしたところ、半年後にはこうしたストレスが低下しました。こうした成果を積み重ねるなか、さらに他部門からも注目されるところなり、今では研究所全体で活用されています。ここまで5年ほどの期間を費やしてきました。

 FFS理論を活用して、日常の意思決定やコミュニケーションスタイルをすこしずつ変化させていく、こうした経験を積み重ねていった先に「伸びる会社」の基盤ができていくのです。

伸びる会社」になるためにはいくつかの条件が必要ですが、おおよそ次のような前提条件になるうです。

「伸びる会社」になるための条件

  • トップが本気で人材育成にコミットしている
  • 人事部門の位置づけ(管理ではない)が大事
  • サイエンスを経営に取り込むことを意図する
  • 全社的に人にまつわるデータを集めようとしている
  • 集めたデータを現場が使えるようにしている
  • 現場を巻き込み普及させている
  • 経験則だけではなく、データ、アナリティクス思考が必要になってきそうですね。

    データ活用がおくれがちな人事部門

     人事部門の位置づけやデータの使い方について、別の事例をご紹介します。株式会社セプテーニ・ホールディングス icon-link は、FFS理論を全社的に取り入れている会社の一つです。しかしFFS理論の導入ありきだったのではありません。人を伸ばし、組織を伸ばすために使える手段を探していてこの理論を使うことになりました。

    FFS理論導入事例紹介:株式会社セプテーニ・ホールディングス

    人事部門は事業部から「組織づくりを手伝ってほしい」といわれるような関わりをつくっていくために、自社流に考え抜いたデータ活用を進めています。そもそも、マーケティングや財務においてデータの活用が進むのに比べて、人事部門ではどうでしょうか。人のデータとして、年齢や役職は入っているかもしれませんが、本当はそれ以外にも人にまつわるデータはたくさんあるはずです。

    たとえば同じ部門、同じ役職にいても、上司が変わるだけで成果が大きく変わる場合があります。それも一つの「データ」ですが、なかなかそうした情報が蓄積されているところは多くありません。また、従業員意識調査などが毎年実施され、経年のデータが蓄積されているところは多いかもしれませんが、現場が使えるものになっているか?というと疑問があるのではないでしょうか。

    株式会社セプテーニ・ホールディングス icon-link では、FFS理論を個々人へのフィードバックに使うと同時に、チーム編成や上司との相性という点でもデータをオープンにして活用、人の成長・組織の成長にいかにデータを反映していくかということを追求しているそうです。

    組織で求められるコミュニケーション力とは

     今回は、参加者それぞれの企業で実施していることも話していただきながら、双方向での意見交換を多く含みながら進めていきました。「伸びる会社」のベースになる組織風土を考えるときに『コミュニケーション力に長けた人ばかりで構成されていたらよいのでは?』という仮説があります。

    周囲や顧客とスムーズなコミュニケーションをとれる人が多ければ、組織は活性化し、仕事もスムーズに進む気がします。その一方、組織は多様性があるから活性化するもので、コミュニケーション力だけが求められる能力でもありません。また採用面接のばめんでは、「コミュニケーション能力」が重視されるとも聞きます。そこで、ご参加いただいた各社は、『採用時に何をポイントにしているのか』の取り組みをうかがいました。
     
    伸びる会社になるために:セミナー風景

    面接では「なぜそうしたか」という問いかけをおこなう

     1人目の会社では、コンピテンシーインタビューを重視しているそうです。学生時代のチームでの活動経験を聞いたあと、その経験を深く掘り下げていきます。自分で考えて、主体的に判断をして動いていた人は、「なぜそうしたか」という問いに深く答えていくことができます。実際にそのように動いてきた人は再現力が高く、ついつい面接が長くなるといいますが、ぜひ採用したいと思う人だそうです。
     

    面接官のスキルの平準化

    2人目の方のご経験も同じように、事実を引き出すためのクエスチョンを重ねていき、どこまで深く聞いてもロジカルに考えられているか、が採用のポイントになるとのことでした。ただ悩ましい課題が2つあるそうです。
     
    ひとつは多くの学生がいらっしゃるなか、丁寧にやると一人当たりの面接時間がどうしてもかかってしまうこと。もう一つは面接官によっても判断の差が出るてしまうという、面接官の経験不足と、ノウハウを平準化できていない点です。現在この課題については、何度も回数を重ね経験値をあげていくことで、カバーをしていっているという話も出ました。
     

    共通言語としてのFFS理論

    FFS理論を使って面接した場合、履歴書で見る経験と、FFS理論で分析引き出された個別的特性から、経験や行動思考を推定できるようになります。そのため、面接は先に持った推定仮説を確認していく段階に位置づけられるという工夫ができます。

    行動思考は、1対1の面接だけではなくグループワークでも十分確認できます。株式会社セプテーニ・ホールディングス icon-link では、こうした方向での採用面接を強化しているとのことでした。

    また同社で特徴的なのは、「この会社は成長ができる会社だ」と学生に見てもらうことを意識していることです。たとえば“採用したい”と強く感じている学生に対しては、「自社にきたらこのような活躍ができる」と、学生それぞれの個性を把握したうえで伝えるプロセスを重視しています。現時点の優秀さにたいする視点で選択に時間をかけるよりも、“どう育てるか、どう成長できそうか”という視点で選考基準を定めていく方が、学生にとっても納得のいく判断をしてもらえる、という考え方は、他社も応用できそうですね。

    伸びる会社になるために:セミナー風景

     成長という点について、古野氏から「適応段階は、個性に環境があわせる必要がある」「成長段階は、環境に個性があわせる必要がある」というスライドを紹介いただきました。たとえば入社初期のころは、その人を伸ばすための組み合わせが有効だそうで、特に上司との関係性の設計に注意が必要なのだとか。たしかに社会人1年目の先輩・上司に教わったことは、ずっと記憶しているものですよね。しかしずっとその環境でいいのか、といえばそうではないのだとか。次の段階になると、周りの環境に対して、どう自身の個性を活かして働きかけができるか、が成長度にも影響してくるのだそうです。

    人事部が持っておきたいデータとは

     評価制度に360度評価があります。辛辣なコメントを受け止めきれない人もいるかもしれません。この点もFFS理論で個性や相性を事前に把握していると、関係性から推測されることを前提に受け止めやすくなります。

    拡散性因子が高い上司に対して、部下は保全性因子が高いばあい、360度評価は下がる傾向にあります。逆に受容性因子や保全性因子が高い上司が、保全性因子が高い部下を評価すうと、数値は高くなりがちです。これは同気質には同調しがちである、というデータからも明らかです。が、こうした前提を加味せずに、評価結果だけをみて比較してしまうと、上司側の個性も生かせなくなってしまう危険もあるのです。

     キャリアの考え方にも因子により差が出ます。VALSの二重階層論という考え方がありますが「体験重視」「達成」「社会意識」など何を目指しているか、は人それぞれで異なります。「違いがある」ことを理解していないと、キャリアビジョンの話も理解が進まず、自分の考えを押しつけてしまうことになりかねません。
     
    古野俊幸氏

    個々の特性や関係性の持ち方という人事データを組織に蓄積し、活用できる状態をつくることは組織の健全性の保持にも役立ちます。体の健康と同じように、組織の健康も未然に防いでいくのが重要です。評価が低いままくすぶってしまう人に対し、異動で違うチャンスを渡したり、上司との相性が原因で離職を考えている人に対してメンターなどのケアを入れたり、様々な未然防止の手がかりをデータからつくることができます。

    もちろん、データは慎重に扱う必要がありますので、導入する人事や責任者がしっかり理解をし、カウンセラーなどの講座も受けながら、自組織では「このように活用しよう」という方針と運用にたいする意思を持っていくことが大事です。今回は複数社の実事例の経年変化も聞くことができ、冒頭に出てきた「小さなことの積み重ねが大きな差を生む」を実感した回となりました。

    本日のセミナーのポイント

    本日のセミナーでお伝えさせていただいたポイントは次の5つです。

    1. 人に関するデータを会社はもっと持つ必要がある
    2. そのデータは人の特性や関係性などの情報も含まれる
    3. 考え抜いた人の組み合わせは、成果を導く
    4. 成功したチーム編成のポイントは、学び取り入れることができる
    5. 一連の人・組織づくりのプロセスには、本気でコミットするトップが必要

    「伸びる会社」になるために:セミナー風景

     今回うかがった事例はいずれも、一朝一夕になされたものではありません。FFS理論をただ導入するだけではなく、仮説検証を繰り返しながら、自組織にあった運用を徹底していました。採用時の個性データや、特長把握の活用だけに終始していないことが、ポイントですね。

    組織としての成長、社員一人ひとりの成長を志向するぶれない姿勢が、高みを目指していくうえで重要になると改めて感じました。