組織づくりの「スジ」を通すとは?

組織は戦略に従う』――アルフレッド・D・チャンドラー著の邦訳タイトルですが、シンプルに組織の本質を表しています。組織に階層をつくるか、フラットにするか。事業部の独立採算制をとるのか、本部管理をするのか。この決め方だけで組織メンバーの行動が変わってきます。それは良し悪しではありません。目指す方向に向かうのに適しているかどうかが、組織形態を決める基準になります。
 

組織形態の基本パターン

組織形態には「機能別組織」「事業部別組織」「マトリクス型組織」「プロジェクト型組織」といった基本的なパターンがあります。混合型や変形型もあるでしょうが、多くの組織がこのいずれかを基本にしています。
 
機能別組織と事業部別組織 マトリクス型組織とプロジェクト型組織

ただし、組織の成長フェーズが変われば組織形態が変わることはよくあります。ここで悩ましいのは、 本来は戦略に従った組織づくりをしたいのに、現状の対処型で組織を「何とかしないといけない」となってしまう 場合です。

成長著しい企業では、毎月のように採用を続けることも珍しくありません。気づいたら1年間で社員数は倍増。その人員を戦略通りに配置するつもりだったのに、思い通りにはいかない……ということはないでしょうか。束ねるマネジャーの負荷が多くなりすぎて、大人数のチーム運営ができなくなってしまうケースや、機能別組織のつもりだったのに兼務業務が増えて役割分担があいまいになってしまうなど、思いあたる方も多いのではありませんか。

当初の組織形態に固執する必要はありませんが、現在の組織実態がどうなっているのかを、CHROや経営幹部は常に把握しておく必要があります。

兼務業務がある組織の難しさ

たとえばこんなケースを見てみましょう。ある会社では営業部、開発部、管理部とわかれた機能別組織で今期をスタート。とはいえ人員が足りない部分があるので、Aさんは営業と開発を兼務、Bさんは開発と広報を兼務、というように複数業務を担当していました。兼務体制では成長スピードが追いつかないため、専任体制に向けた採用が進められます。

あるとき広報の採用が決まり、採用されたCさんが管理部に配属されました。しかし「これまでの広報ネットワークを活用しなきゃね」と管理部長のひとことで、Bさんの兼務状態は解消されることがないままに広報は2人体制として進みはじめました。

確かにBさんのネットワークを生かした広報は有効です。しかし機能別組織をつくり開発に集中できる専任体制をつくりたかったはずなのに、当初の目的は実現できませんでした。その理由は、本来はBさんの兼務だった部分を引き継ぐべきなのにもかかわらず、 Bさんの広報業務を組織の役割として認識していなかったために、あいまいに続いてしまった からではないでしょうか。
 

組織が組織として成立する条件とは

組織の盛衰』(堺屋太一著)の中で、組織の構成要素は次のように指摘されています。
・構成員がいる
・何らかの共通の目的と共通の意思が存在する
・一定の規範、倫理と美意識の共通性がある
・命令と役割が存在する
・共通の情報環境にある

どれか一つが欠けると、「組織」として成り立たなくなってしまいます。欠けてしまうケースは多くはないでしょうが、不十分なことは多くあるのではないでしょうか。先のケースは、命令と役割があいまいになってしまった例です。同著のなかで堺屋氏は、組織のおちいりがちな課題も指摘しています。
・「組織を作る目的」と「作られた組織が持つ目的」が必ずしも一致しない
・全体の手段が部分の目的になる
組織の目的と組織構成員の目的が異なってくる


 

CHROに求められる大きな役割

CHRO:最高人事責任者は、こうした問題が起こり得ることを知って「今の組織はどのような状態か」「各部門で手段と目的がはきちがえられていないか」など組織の細部まで気を留めていく眼を持ちたいものです。

組織形態は社内の情報伝達にも影響します。系統が一本の機能別組織とくらべると、マトリクス型組織は縦横にも連絡網がひろがります。 上層部からの情報発信の伝わりやすさは機能別組織の方がはやく、部門間の情報はマトリクス型組織の方がはやい傾向にある と言えましょう。また同じ組織形態でも階層数や、コミュニケーション手段によってもおおきな違いが出てきます。

機能別組織 事業部別組織 マトリクス型組織 プロジェクト型組織
特徴 部署別など、機能ごとに組織化している。ヒエラルキー型。 事業部ごとに完結した業務遂行と意思決定機能を持つ。複数の商品群を持つ場合などに多い。 機能別組織と事業部別組織の両方を取り入れた組織形態。 プロジェクトごとに組織がつくられ、都度プロジェクトリーダーが立てられる。
メリット 機能別に役割分担がしやすく、事業の拡大期に適している。 迅速な意思決定や事業ごとの収支責任が持ちやすい。 既存業務とプロジェクト業務の調整や追加が柔軟にしやすい。 プロジェクトごとに適する人で構成することができる。
デメリット 部門間の壁ができるなど硬直化する場合がある。 全社最適の視点が薄れる場合がある。 指揮命令系統が複数生じやすい。 組織知として継承されづらい。

現状の組織形態は経営戦略にあっているか。次の経営計画にとって適切なのか。組織の細部に意識を向けると同時に、大局的な視点で組織を捉えていくのも、CHROの大きな役割と言えます。