人も組織も、目指す方向が見えれば力をだせる:大竹哲郎氏の経験と価値観【インタビュー】

人と組織の可能性を引き出し続けている大竹哲郎氏の経験と価値観

どのような機会にどのような判断をしてきたか。どのような経験を積んできたか。「この人はどういう人なんだろう」、ボードメンバーの人となりをお伝えするのが、この「紹介記事」です。大竹哲郎氏は 「企業で人事経験を積んできた」、と一口には収まらない経験を積まれてきています。工場の現場で、組織統合の過程で、制度改定を通じて…変革に関わってきた経験と現在について、詳しく伺いました。

人事のあらゆる仕事を経験~現場実務、戦略立案、企業間統合まで

独立するまでは長年、株式会社IHIで仕事をしてきました。ここに就職したのは宇宙開発をやっていることに興味を持ったからです。メーカーを中心に就職活動を進めていたのですが、「これからは宇宙開発の時代だ」という思いがありました。当時は今ほど人工衛星もとんでおらず、BS・CS放送やGPSもない時代でした。宇宙開発に携われば世の中の発展に貢献できると思い、宇宙開発に関わる企業を中心に就職活動を行い、IHIに入社しました。ただ私は文系なので開発に関わるわけでもなく(笑)、入社後の配属は人事になりました。

これはこれで面白そうだと思ったんです。大学時代に入っていたゼミが人事テーマも扱うことがあって、聞きかじっていたものはありました。ゼミの先生が技能伝承を研究していて、若いころに製鉄所なんかで泊まりこんで相当現場のヒアリングをしたそうです。もともと工学系でものづくりを研究していた先生なのですが、ものをつくる「人」に焦点があたっていった経緯も聞いていて、人に関わる仕事の意義を感じていました。

結果的にずっと人事系の仕事をしましたが、その中で経験した仕事はかなり多岐にわたります。はじめは工場の人事を担当し、労務管理から新入社員育成、それから裁量労働制の導入といったことをやりました。その後本社と工場を数年で異動しながら、工場では労務関係全般を担当、本社では教育体系や規定整備、さらには全拠点の労務管理をまとめていくような役割も担いました。工場移転や事業の統廃合も実務面で関わっています。

大竹哲郎氏

入社後10年ほど経って、ようやく宇宙開発事業に関する仕事に関わることができました。この頃に会社では、他社の宇宙開発事業を買収してグループ会社化し、さらにIHIの宇宙開発事業部の一部を同社に統合するという動きがありました。そのプロセスに関わり、2年ほどそのグループ会社で立ち上げから実務までを担当しました。制度やルールの統合や整備はそれなりに進んでいく中、人の感情面への配慮も必要でした。

「何でこっちが合わせないといけないんだ」とか「何であっちは優遇されているんだ」とか、統合の際に起こりがちな意識の差はやはりあって、それを融和していくことが本当に一つの会社になっていけるんだろうなというのを経験しました。その後また本社で評価処遇制度やキャリアプログラム、管理職や役員の処遇改定などを手掛けました。時代が移り行くなかで、経営戦略と連動して、先を見ながら人事戦略を検討するということの重要性を学びました。

ここで再度、他社との事業統合の検討が始まっていたプロジェクトに入り、統合準備委員会の人事ワーキンググループでの議論から実際の統合実務、制度構築と現場の交流や一体感づくりまで実施して区切りをつけました。

人も組織も、目指す方向が見えれば力を出すことを実感

組織の転換期に人事面から関わることが結果的に多かったのですが、組織を動かすのに大きく影響するのは、理屈ではなくてムードとか感情面であると、いろんなシーンで実感しました。たとえば処遇制度改定の時に理屈でスタートしたものがあったんです。「成果が処遇に反映されれば人のやる気が出るはずだ」といった議論は、決して間違ってはいないのだけど「理屈」にたっているので、「それだけじゃ人は動かない」と思ったこともあります。

もちろんムードや感情だけでは望ましい方向にいくとは限らず、結局「どこを目指すのか」を明確にして共有するのが大事になってきます。組織が一緒になるときって、言い回しとか用語の違いとか、小さなことで引っかかったりするんです。たとえば職制の呼び名をどちらに合わせるかが議論になったこともありますが、合意を一つひとつつくることになります。目指す方向が共有されていれば出身の垣根を越えて協力できるのですが、見えないとその小さな一点で折り合わなくなってしまうこともあります。

大竹哲郎氏

人の力の源は、やっぱり「こうありたい」とか「こういうことを実現したい」という本人の思いにあると思っています。「やらされている」と思っている仕事では、やる気や意欲は生まれません。サービス業だったら「お客さんにこんなふうに喜んでほしいとか、「お客さんの人生がこう変わることをサポートしたい」となるでしょう。そうやって「どんな世界をつくりたいのか」の想い、意志をしっかり描くのが一番大事なんじゃないかなと思っています。

これまで培った経験を活かして企業をサポート

前職での仕事はずっと楽しかったんです。異動の都度、新しいことに直面して、ハードルは高くてもやりがいがあって、実施する中で手ごたえも感じられて――というのを繰り返していました。ただもともと独立とか起業に興味があったんです。実は就職活動の頃から少し頭にあって、会社員時代もたまに考えることがありました。

結果的に今は人事系の仕事で独立しましたが、全然違う事業を考えたこともあります。たとえば卒論のテーマで酪農経営を扱ったこともあって、農業とか食料自給率とか関心がずっとあるんです。そういったテーマで何かできないかなと思って研究したこともあります。

ある時から区切りをつけるタイミングを考えていて、結局2014年に独立しました。大学時代の3、4年にシルクロードやアンデス地方を長期間かけて旅したことがあるのですが、未知の世界に体当たりで入り、その状況ごと楽しんでいくたちかもしれません。今は、人事コンサルティング、各種研修、あとはアスリートコーチングを中心に行っています。

人事コンサルティングは戦略や制度設計から実務支援までやっていますが、おそらく私自身が 実際に現場で運用してきた経験とかマネジャーとして経験してきたことが、実用的だと重宝されている気がしています 。その会社がどこへ向かいたいのか、それを実現させるための人事は何が必要か、運用を念頭に置いたときに何に気を付けたらよいかといった勘所のサポートですね。一緒にやっていく人事の担当者の成長支援も意識しています。

研修講師という仕事には思い出があります。自分が新入社員で入ったときに受けた研修の中で外部講師の講座があって、その講師が研修もうまく進行するし、何のためにやるのかという説明も非常に的確に伝えていたんですね。「研修って面白いな」「こういう仕事があるんだな」と思った記憶があります。前職で人事に配属になった時点で、社内講師となることも多かったのでインストラクションスキルなどは早くから習得する機会がありました。現在行っている研修としては、マネジメント研修、チームビルディング研修、コーチング研修、コミュニケーション研修などが多いです。

大竹哲郎氏

後半:目標をリアルなものにするコトが支援へ続く)