組織の成長や変化を渦中で体験してきた「松葉重樹」の思う、成長組織に必要なコト【インタビュー】

【松葉さんの思う、成長組織に必要なコト】
組織の成長や変化を渦中で体験してきたボードメンバーの松葉さんに、企業の成長期で起こりやすいこと、注意した方がいいことをお聞きしました。

Q:成長組織でのマネジメントで留意すべき点と思われることはなんでしょうか

幹部が人を「巻き込める」かどうか

サイバーエージェントで仕事をしていたときに藤田さんに言われたことがあって。「全部自分でやるな、巻き込めよ」と怒られたんですね。その当時のぼくは28歳くらい。たとえば自分の管轄していた事業の業績が伸びどまっているときの定例会議には気合を入れて入っていくんです。「今こうですけど、これからあれやってこれやって…必ずこうします。やる気になれば全部できます」みたいな感じです。

でも藤田さんをぱっと見ると機嫌悪そうなんです。「これ全部できるのか?」「はい、もちろんです。とことん時間使ったらいいんで」というやりとりの先に返ってきたのがさっきの言葉です。当時のぼくにとっては結構転機となる言葉で、そこから「巻き込め」とか「やれないことを決めろ」とかそういうことを学びました。

ベンチャー初期の頃は、寝ずに働いて何とかプロダクトをつくりあげて…みたいな状況が結構あると思うんですね。それをやったから成長してきた。でも組織として次のステージでもそのまま成長できるかどうかは、それまでのマインドや行動から転換できるかどうかが肝になってきます。全部自分でやっていたらもたないし、役割を分化させることで組織としての力が発揮されるようになっていくからです。

組織規模によって社長の動きもまた変わってきますが、大きくなればなるほど基本的に社長は「暇」になるはずなんです。人に役割渡していきますからね。もちろん現場で手を動かし続ける人もいるでしょうけれど、それが主たる業務ではなくなってきます

松葉重樹

たとえば社員数が10人と30人と100人と増えていくと、組織体制も変わってきます。組織規模によって社長の動きもまた変わってきますが、大きくなればなるほど基本的に社長は「暇」になるはずなんです。人に役割渡していきますからね。もちろん現場で手を動かし続ける人もいるでしょうけれど、それが主たる業務ではなくなってきます。

それでどんどん手離れをしていくと、目先でやることより未来のことを考えることになる。それが役割でもあるのですが、何でも自由に未来を考えればというわけではないんです。事業を離れて“余興”のような感じで考えてしまって、現場とフィットしないアイデアになっていってしまうケースも見てきました。

その会社にあるリソースと微妙に違うことをやりだす傾向もあります。ベンチャーは特にリソースに限りがあるので、微妙に違うことをやるだけで一気にちぐはぐしてしまいます。 組織規模を問わず変わらないのは、社長が現場感覚をしっかり持って未来を考えることですね。そこの立ち位置を間違えると取り返しがつかなくなってしまうと思っています。 

たとえば「しゃがんだ」ときに、人が辞めることや入れ替えが出ることも折り込む。ビジネスモデルが変わる可能性も高いので、それも折り込む。ビジネスモデルと組織体制変革を同時に動かすことになるでしょうが、腹くくってやるしかないですよね。2年くらい「しゃがむ」必要が出てくることは結構あります。 Kauli時代にこれに近いような時期をぼく自身も経験しました。

松葉重樹

事業は伸びていましたが、でもなかなか次のステージへのシフトがしきれなかった時期があったんです。ぼくは事業責任者だったんですけど、組織づくりのところを全部引き取って再整備をしました。そこで必要になった採用活動は調整から面接まで自分でやって、決まった後の入社準備も総務の人と一緒にやって、入社式もつくって。全部手を付けて全部やりましたね。

「組織」で見ずに「人」で見る

ベンチャーに限らず組織の合併・統合はあると思うのですが、その時にはPMI(Post Merger Integration)と言われる、M&A成立後の統合プロセスが絶対大事になります。KauliをVOYAGE GROUPに統合するプロセスでは結構苦労がありました。統合が決まった後、変化を受け入れる社員、変化を拒む社員という違いがまず生じましたし、統合後も新たな事業のやり方に馴染める人・馴染めなかい人、新しいやり方についていける人、ついていけない人、というのがいろいろ生じたのですが、そこで必要になった組織のテコ入れには相当注力しました。

具体的にはマンツーマンでミーティングですね。いろいろな個々の事情を支援しながら自律的に個々が動けるまで入り込みました。当時39人正社員がいたのですが、結局30人が辞めずに残ったんです。もともとこの統合に関しては、買ってくれた会社のためにも人をしっかり残すというのも自分のミッションだと思っていて、そこはある程度果たせたかなと思っています。

この時を振り返って思うのは、やっぱり「組織」で見ずに「人」で見たということですね。どの人にも、上司とか部下とか同僚とか「会話の動線」ってありますよね。「お前これ任せた」とか「ちょっと相談したいんですけど」とか、そういう動線を継続できるような移行を意識しました。そうすると人ってあまりストレスが増えないんですね。大きな環境変化の中でも、想定よりは少ないストレスで移行できたとしたら、こういう部分だったんじゃないかなと思います。

松葉重樹

また、それぞれの人にそれぞれの背景があるんです。同じ営業部にいたとしても、元々は開発で、経験を広げるために今営業にいるAさんと、これまでも今後もずっと営業でがんばりたいBさんとでは背景が違います。でも新組織側はその違いがわからず、一律営業の人、と扱って今後のキャリアを決めてしまうかもしれない。そうではなくて、「Aさんはこういう背景で、マインドは開発なんですよ」と伝えるだけで、Aさんに対する見方やコミュニケーションが変わってくると思うんです。それを一人ひとりやりました。

元々人が好きなたちだと思うんですけど、この時は本当に一所懸命一人ひとりを見ました。新会社側のためにも、しっかり人を残そう、そのためにはどうすればいいだろうって考えたことは覚えています。「マイクロマネジメント」はネガティブな意味に使われることもあるけれど、結局人ごとで異なる特性や価値観を一つひとつ理解しながら、マイクロで見るしかないというのはこの時の一つの結論です。

日常のマネジメントといっても、どうしてもしっかりした会話はできなかったりする。そこは意識的に会話をする場所をつくって、人と人としてのコミュニケーションに丁寧に時間をとっていくことがやっぱり必要だと思いますね。

 icon-pencil 編集後記

会話の動線」という言葉に、現場のリアルを表現している感じを受けました。まさにどの組織の仲にも様々な「動線」がつくられているはずです。席替えや組織変更で変わる動線もあれば、階層とは関係なく存在する動線もあるでしょう。マネジメント側がその動線の状況や変化に注目するだけでも、多くのヒントや働きかけのポイントが見つかるかもしれない、と気づかされた言葉でした。