CHROとは「組織の動かし方の道理」を知っている人【CHROの肖像】

プロフェッショナルボードメンバーが語る、成長期企業に必要なポイントとCHROの機能

[宮嶋邦彦の考えるCHRO像] これまで培ったHRの知識や経験と自社の事業・組織特性をかけあわせて、自社にあった組織の道理をつくる。そして経営者の持つ人・組織面のイメージを言語化し、どうやったらできるかの発想で実行推進していく。

開業社会保険労務士としては、日本で初めて証券会社において上場審査の監修をおこない、その後も上場準備企業向けのコンサルティングを数多く担当してきた宮嶋氏は、成長期企業の持つべき視点をどのように捉えているのか。インタビューに答えてもらった。

経営者の持つ概念を具体化・言語化する

Q:企業の成長期で起こりがちな現象はあるでしょうか。

宮嶋 人が増える中で創業メンバーと成長ステージで入ってきた人の差、そこでの文化衝突というのはよく見聞きします。「成長痛」のようなものですね。そのとき経営者はどこに軸足を置いて判断するかが求められてきます。おそらく50名規模までは社長が全体を見ることができます。しかしそこを超えると「機能」が必要になってきます。どういう企業にしたいかを描き、それを実現する組織をつくっていくフェーズです。

インタビュー風景
 
往々にしてあるのは経営者はイメージをしっかり持っているのだけれど、しっかり周りに伝えきれていない。そういうときに 経営者の持つ概念を具体化、言語化して実行推進していく役割が、財務面ではCFOに求められる。いっぽう人・組織面ではCHROになってきます。 ポジションというわけではないですからナンバー2の人が兼務する場合があるかもしれませんね。

仮に社長の考えが明確で、それに沿って実現していくにしても、組織としては社長が発言すべきではないシーンがあると考えます。機能と役割を設計し組織化が進む段階で、機能・役割を超えて発言することで事故が起こりやすくなります。横のポジション兼任が過度に起こるのも同様ですね。たとえば営業部長と管理部長を一人が兼ねたまま組織が大きくなっていくと、牽制がきかなくなる恐れがあります。特に上場に関する組織論ではこうした点が重要になりますし、組織設計をするときの留意点にもなってきます。

効果的な組織の動かし方を提案し、伝える

Q:CHROの役割とはなんでしょうか

宮嶋 求められることは、創業社長の会社なのか、プロ経営者の会社なのかでも変わるでしょう。特にベンチャーフェーズだと創業社長の場合は、まわりが社長や社長のビジョンにほれ込むケースが結構ありますね。その魅力を周囲とつなぎ続けることが重要になります。プロ経営者の場合は、経済合理性で集まってくる人も多いかもしれません。人・組織領域でも効果性という考え方がより求められてきます。

宮嶋邦彦 

またCHROは効果的な組織の動かし方、自社にあう採用や育成の仕方などを、経営者に対して説いていく役割もあると思います。私の友人に世界的に有名なプロスキーヤーがいるのですが、彼から私の娘にスキーを教えてもらったことがあります。そうすると、私が教えるのとまったく違うんですね。どこに体重をかけて、どのように体を使って、といった術を道理に沿って説明してくれます。理解しやすいし、上達も速いですね。

それと一緒で、 プロは自分の仕事にしていることの道理をつかんで人にも話す術をもっているはずです。 CHROというHR領域のプロは、組織の動かし方の道理を最もつかんでいる人でしょう。これまで培ったHRの知識や経験と自社の事業・組織特性をかけあわせて、自社にあった組織の道理をつくっていくことが求められます。その道理を社員にも社長にも伝えていくことは、組織文化の醸成にもつながります。

―率先してできるすべを考える

Q:CHROに必要なメンタリティはどのようなものでしょうか

宮嶋 これまでお付き合いしてきたベンチャー企業の方々は多いですが、共通するのは絶対「できません」は言わないことです。難しそうなことでも「時間があとこれだけあればできます」「今の体制では難しいですが、もう1人増やせばできます」などと、どうやったらできるかを考えますよね。CHROもその思考が求められます。

宮嶋邦彦

トップリーダーとして率先する立場ともいえます。経営者の持っているイメージを言語化したりビジュアル化していくときに「できる」「できない」を整理し、どうやったらできるかを考えて提示していく。人の採用、組織設計、給与や賞与設計といった個別施策から、3年後5年後を見据えた組織戦略における課題まで同様です。

たとえば3年先の組織を描いて、そこに必要なリソースを固めていくときにCFOだと予定どおりに資金調達ができない場合が出てくるかもしれません。「このやり方では難しいですが、少し時間をもらってこちらのルートも開拓します」とできるすべを何とか考えていくはずです。CHROには「今より1.5倍規模の人数が機能して成果を出している組織」というイメージの具現化が求められるかもしれません。

全員をスーパースターでそろえると言われたらきっと難しいでしょう。しかし一定のスキルを持つ人材採用と、研修やOJTプログラムによるレベルアップ設計、またモチベーション向上施策設計などを組み合わせて具現化していくことはいくらでも可能性があります。まさにどうやったらできるかの発想で、必要な組織を実現し続けることがCHROの役割になってきます。

ベンチャー企業は社員も社長も会社そのものも、決して止まらず動き続けないと成り立たなくなってしまいます。魚にたとえると、サメやマグロのように泳ぎ続けなければ生きていけない種類でしょうね。無論、一定のステージを超えたら、守りを固める人や決まったことを続ける人、というのも必要になってきます。

しかしまだまだ会社が成長し、変化するフェーズでは、動き続ける組織集団をいかにつくり、かつ総合力を出していけるようにするかにかかってきます。いくらでもやりがいのある面白い領域だと思っています。
 

 icon-pencil 編集後記

「組織の動かし方の道理」という言葉が印象的でした。普遍的な道理と、その組織でこそ機能する道理と、両面があるでしょう。道理にあわないことをすると不具合が起こるかもしれません。CHROは“道理”を知っているゆえに、組織状態を適正に見抜くことができるエキスパートなのだろうなと思いました。